「第36回イエール国際フェスティバル(Hyeres International Festival以下、イエール賞)」が10月17日に開催され、イギリスのメンズデザイナー、イフェアニ・オクワディー(Ifeanyi Okwuadi)がグランプリを受賞した。
グランプリには2万ユーロ(約260万円)の賞金と、パリで行われる素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION)」への参加権が贈られる。また、シャネル(CHANEL)の子会社パラフェクション(PARAFFECTION)が管理する専用アトリエとのプロジェクトに参加する機会も与えられる。
オクワディーはナイジェリア出身の父とシエラレオネ出身の母を持ち、現在27歳。ロンドンのサヴィルローで3年ほど見習いをした後、英レイベンズボーン大学(Ravensbourne University)でファッションデザインを学んだ。その後、ロンドンを拠点するブランド「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」や、デザイナーのアイター・スロープ(Aitor Throup)の下でインターンを経験。今回のコレクションは、「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」でロジスティクス関連の仕事をしながら制作したという。
“男の子たちから玩具を取り上げろ(Take the Toys From the Boys)”と題された同コレクションは、英空軍基地に核兵器が配備されたことに抗議するために1981年から2000年まで運営されていたグリーナム・コモン・ウィメンズ・ピースキャンプ(Greenham Common Women’s Peace Camp)を着想源としている。作品には抗議行動のさまざまな要素が反映されており、警察官の制服にインスパイアされたトレンチコートや、抗議活動の参加者が暴力的に排除される様子を表現した襟ぐりの広いスウェットシャツなどが登場した。
オクワディーは、「世界の酷い出来事について、誰もが行動を起こすべきだ。イギリスにはあまり知られていない歴史的な事実があり、スティーブ・マックイーン(Steve McQueen)監督などはそれを映画で表現している。私はそれをファッションやデザインを通じて表現したい」と語った。
審査員長を務めた「ラコステ(LACOSTE)」のルイーズ・トロッター(Louise Trotter)=クリエイティブ・ディレクターは、「オリジナリティーのあるアイデアを、いかに現実的な作品として落とし込めているかを重視した。豊かなクリエイティビティーと同時に、高い目的意識を持ち、業界に新たな何かをもたらしてくれる人材であることが受賞の要件の一つだった」と述べた。
ほかにも、「クロエ(CHLOE)」によるクロエ賞(Chloe Prize)はラトビアのニットデザイナー、エリナ・シリナ(Elina Silina)が、「シャネル(CHANEL)」が協賛するメティエダール賞(Metiers d’Arts Prize)はタイのラクポン・ライマチュラポン(Rukpong Raimaturapong)が受賞した。
イエール賞は“若手デザイナーの登竜門”として知られており、これまでに「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」のジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)=クリエイティブ・ディレクター、「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)」のデザイナーであるヴィクター・ホルスティング(Viktor Horsting)とロルフ・スノーレン(Rolf Snoeren)、「サンローラン(SAINT LAURENT)」のアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)=クリエイティブ・ディレクターなどが受賞している。