ここ1〜2年、“開運”や“お守り”、“占い”といったキーワードがファッションやビューティの小売りの現場で目立つようになっている。こうした傾向を表すように、博報堂生活総合研究所による「生活定点」調査2020年版では、「占い・おみくじを信じる」と答えた人の割合が前回の18年版より3.8ポイント上昇し、32.5%になった。特に伸びが顕著なのが20代女性で、17.1ポイント増の66.3%となっている。ここまでの急伸を示したことは、1992年の調査開始以来例がない。コロナ禍はもちろん影響しているだろうが、それ以外にここから読み取れることは何か。生活者の心理や消費の変化を考えるためのカギを、同総研の酒井崇匡上席研究員に聞いた。
WWD:もともと「若い女性は占い好き」というイメージはあるが、20代女性の7割弱が「占いを信じる」と答えていたのには驚いた。
酒井崇匡 博報堂生活総合研究所上席研究員(以下、酒井):コロナ禍との直接的な因果関係は分からないが、18年版と比べてここまで劇的な変化があると、コロナと無関係と言う方が難しい。占いと類似した質問で、例えば「宗教を信じる」人は前回から減っているし、「運命を信じる」人もさほどの変化はない。一方で、「自分自身のことをもっと深く知りたい」という項目は、「占いを信じる」と同様、20代女性の数値だけ大きく伸びた(11.6ポイント増の39.6%)。20代女性はステイホーム期間中に自分自身や将来について考える時間が増えたことで、それをストレスに感じるようになった、そこから自分を見つめ直す面もある占いにはまっていった。この2つの結果からはそんなふうに推測ができる。
WWD:ステイホーム期間中、結婚して子どものいる世代などでは子どもの面倒を見ながらどう働くか、夫婦それぞれのリモートワーク部屋をいかに確保するかといった議論が活発だった。
酒井:そうした人たちは、「忙しすぎて自分を見つめ直すどころじゃない」というケースが多かったと思う。しかし、一概には言えないが、統計的に20代女性には独身で働いている人が多く含まれている。ステイホームで家に1人でいる時間が増えたことで、興味が自身の内面に向かっていったのではないか。占いは「本当に判断に迷っているから教えてほしい」というよりも、ある種の民間のカウンセリングのような部分があると思う。医療のカウンセリングのように素性を明かす必要はないし、コーチングと違って恋愛などのライトな事柄も相談しやすい。以前、生活者調査の一環として占いに同行して録音や観察をしていた時期があるが、占いは言葉によるデトックスの面が強いと当時よく感じた。
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