コロナ禍を経てEC化率はさらに上がった。ネットで服を買う人はさらに増えて、ECサイトにはスタッフのスタイリングページが必須になり、オンライン接客を始めたブランドも急増している。そうした中で注目を浴びているのが、ライブコマースだ。人材派遣のiDAではライブ配信で活躍できるスタッフの育成、派遣を始めた。その第一号としてオンワード・クローゼットのライブ配信に登場した阿蘇奈南子さんが抜擢された。ライバーとして初めて出演した配信の感想や販売の仕事への向き合い方、ファッションの魅力などをうかがった。
―iDAに登録したきっかけを教えてください。
阿蘇奈南子さん(以下、阿蘇):元々、おしゃれすることがとても大好きだったので、接客販売をしながら洋服について勉強できたらなと思い、派遣登録しました。もっと現実的な話をすると、子どもの保育園のお迎えの時間に合わせて働けるところをiDAから紹介していただいたのがきっかけです。
―それ以前にも販売職はされていたのですか?
阿蘇:お菓子の販売や飲食店などでも働いていましたが、ギャル系ブランドの販売員として働いていたこともありました。その後、子どもが生まれてからはヤクルトレディをしていたこともあります。
―幅広く接客や人と接する仕事をされていたんですね。また、ファッション業界へ戻ってきたのは?
阿蘇:ギャル系ブランドで働いていた時に、ある服を着ていると褒められるのに、違う服を着ている時は何も言われないのはなんで?と漠然と考えていました。例えば、お客様にはこの形が似合う、この色が似合うということは感覚で分かるけど、なぜ似合うのか、それをどう伝えたらいいのだろうか?と。プライベートで子どもができたこともあり、一時は離れていましたが、それから心理カウンセラー、占星術、パーソナルカラー、骨格診断などを勉強して、今は個人でもファッションコンサルタントとしても活動をしているんです。
―それは凄い!骨格診断やパーソナルカラーは理解できますが、なぜ占星術や心理学も勉強を?
阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断はロジカルな手法ですが、人が持つ潜在的な魅力をさらに引き出したいと追求していたら、心理学や占星術にも辿り着いたんです。今やっているファッションコンサルタントも占星術とファッションを組み合わせた内容になっています。
―それはどういった内容なのですか?
阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断で理論的に似合うもの診断した上で、星占いでさらに似合うものを深掘りしています。
―似合うものへの探求心が凄いですね。
阿蘇:私自身が「おしゃれになりたい」という気持ちが強かったからだと思います。私は着ている服や色で、その人の第一印象は決まると考えていて、特に初めて会った人への印象は見た目に大きく左右されると考えています。例えば、全く自分に似合わない色を身に着けると、顔色が悪く見えたり、クマが目立ったり、そのせいで具合が悪そうに見えるのはもったいない。でも、似合う色を身に着けていると元気があって明るい人だな、一緒に仕事がしたいと思ってもらえる。それがファッションの凄いところで、ファッションの仕事をしたいという原動力になっています。
―実は私も骨格診断とパーソナルカラーを受けたことがあるのですが、この服を着ると太って見える理由が分かった時に腑に落ちた経験があります。今も似合うシルエットになるようコーディネートしています。一方で診断結果に縛られて、オシャレになれないという方もいます。だから販売員の方が理論として身に着けて接客してもらえると心強いですね。
阿蘇:そう思います。例えば、いろんなピンク系の色の中でもお客さまにはどのピンクが似合うか的確なアドバイスができるようになれると思います。私は勉強をして、アドバイスの幅が広がり、接客がより楽しくなりました。試着室から出てきたお客さまにただ「かわいいですね!」だけでは味気ない。どういうところか似合っているのか褒めることができれば、さらにお客さまとの信頼が深まり、楽しい接客ができると思います。
―そうですよね!その経験が今回のTIG LIVERへの抜擢につながったんですか?
阿蘇:そうです。今回、ご依頼いただいたオンワード樫山の「エニスィス(ANY SIS)」のライブ配信ではパーソナルカラーや骨格診断がテーマにあり、iDAから「やってみませんか?」とお声がけいただきました。
―それまでライブ配信などはやったことは?
阿蘇:知人の占い師さんとインスタでコラボ配信はしましたが、それ以外では経験はありませんでした。でも、今まで経験したことのないお仕事でしたので、二つ返事でお受けしました。
―実際にライブ配信をしてみていかがでしたか?
阿蘇:オンワードの社員の方、スタイリストさんと3人で和気あいあいと配信ができて、とても楽しかったです。一応、台本などもあり、リハーサルもしたのですが、台本通りだったのは最初の自己紹介まででしたね(笑)。それからは視聴者からのコメントを拾って、それに答えるような形でした。
―ライブ配信にあたり、心がけたことは。
阿蘇:目の前にお客さまがいる想定で、接客するように話そうと心がけました。最初は少し緊張しましたが、コメントを拾いながら配信しているとだんだん目の前にお客さまがいるように感じられて、楽しくなってきました。自分が実際に着てみて、こんな手触り、着心地はどうで、骨格とパーソナルカラーでいうとこんな感じ見えるよと説明をしていると、コメントで反応があり、目の前にお客さまがいて一緒にショッピングをしているような気持ちになりました。特に、最初のコーディネートから自分の骨格とパーソナルカラーにあった服にチェンジしたときはお客さまの反応が「すごい変わった!」「こっちの方が似合う」など、パーっとコメントが流れてきて、そのときはすごく嬉しかったですね。
―目に見えて変わったということですね。
阿蘇:「今、買いました」ってコメントが届いたときは嬉しかったです。改めて、このTIG LIVEの仕組みはすごく便利だと思いました。
―逆に何か反省するとしたら?
阿蘇:そうですね、もっと緊張感を持った方がよかったかなと思います。本番は3人が意気投合して、結構ノリノリでしたので(笑)。
―視聴者的にはその方が楽しいと思いますよ(笑)。
阿蘇:そうですよね!台本を棒読みで淡々と商品説明をされても面白くないので、リアルな接客のように、目の前にお客様を楽しませることが大切だなと思いました。だから話すときはカメラ目線で、うなずく時もカメラを見ながら「そうだよね」とするように気をつけました。アクションもオーバー気味で、声も大きめで話すなど、その場で工夫しながらやりました。至らない点もあったと思いますが、とてもいい経験になりました。改めて、ライブ配信だけに限らず、接客も仕事も子育ても、やっぱり楽しむことが一番だなと思いました。
―ほう。それは?
阿蘇:この仕事は、身にまとうものが変わるだけで、お客様の表情もすごく明るくなるのを目の前で見ることができます。それが醍醐味ではあるのですが、一方で売り上げを意識しなくてはいけません。好きなものを提供している意識と売ることを意識した接客は少し違うようで、その感覚はお客様にも伝わるんですよね。
―それは多くの販売員が悩むところですね。どう折り合いをつけるのですか?
阿蘇:私は「接客したら絶対買ってもらわないといけない」「必ずこれを今日中に売らなければいけない」という固定観念を外しました。お客さまは好きな服、自分に似合う服を探しに来ているのですから、それを一緒に考えて、ワクワクを提供することを意識するようになってから接客が一段と楽しくなりました。
―中々それを解除するのは難しいですよね。
阿蘇:そうですね。私の場合は目標売上も100%達成するものではなく、「あくまで目標数値なんだ」程度にとどめて頭の片隅に置きながら、お客さまに似合うものを提供する接客に意識を向けました。
―目標に縛られず、まずは楽しむ、楽しませることに集中するということですね。
阿蘇:これまでいろんな業界で人と接する仕事をしてきて感じるのは、遊び感覚で楽しんで仕事をしていると人が寄って来るということです。遊び=ふざけている、怠けているというわけでありません。とにかく仕事を楽しんでいると、自然と「話を聞きたいです」と寄ってきてくれるので、今後もその意識は忘れずに仕事をしていきたいですね。
―最後に阿蘇さんにとって“ファッション”とは?
阿蘇:ファッションは“魔法”です。心理カウンセリングをしていると、話すことで心のメンタルを変えるのには時間かかります。でも、手始めに身に纏うものを変えると、それだけで気分が変わるんですよね。私自身も洋服でその日の気分が変わるから、面白いです。それくらいファッションにはパワーがある。だから魔法なんです。