コロナ禍からおよそ1年半。パンデミックは消費者の生活や行動様式にさまざまな変化をもたらした。一方、足元ではワクチン接種の進展とともに緊急事態宣言が解除されるなど、光明も見え始めている。消費財のトップアナリストである風早隆弘クレディ・スイス証券株式調査共同統括部長兼シニアアナリストは、今後の小売市場をどう見るのか。(この記事はWWDジャパン2021年10月18日号からの抜粋です)
WWDJAPAN(以下、WWD):現状の小売市場分析において、注目しているファクターは?
風早隆弘クレディ・スイス証券株式調査共同統括部長兼シニアアナリスト(以下、風早):生活者の「移動」と「時間」だ。コロナで多くの企業が在宅ワークにかじを切り、通勤時間が減った。東京都市圏の平均通勤時間は片道47分、往復94分とされている。単純計算にはなるが、それに勤労者の出勤日数をかけると、1年間で400時間にのぼる。多様な働き方が広がる中で、今後は、この移動に関わる時間が減少していくことになる。このことが果たして消費行動にどのような変化を与えるのかは大きなテーマになるとみている。
WWD:小売企業は、コロナを契機とした戦略の見直しが喫緊の課題となっている。
風早:移動が減れば、従来の店舗の立地戦略は見直しが迫られる。例えばメガネ製造・小売りの「ジンズ」は、店舗のうち郊外・地方立地はおよそ1割弱にとどまっていたが、今期から郊外ロードサイドの出店を加速させる。またスーパー横に店舗を出し始めた「無印良品」の良品計画など、すでに出店方針を大胆に変えている企業もある。
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