2022年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークで光ったのは、スーツやスカート、ジャケットを上品に仕上げたテーラードスタイル。ブライダルからオフィスシーンまで、多様な場面に合うアイテムが勢ぞろい。伝統的なスーツから形・色で工夫した遊び心あふれるものまで、多くのイタリアブランドが最新のスーツファッションを披露した。
「ブレーズ(BLAZE)」は、長年にわたり洗練を重ねたテーラードスタイルを極めながら、今シーズンでは新たに形や素材で遊びを加えた。フローラル柄をあしらった襟のないボレロ型ブレザーやサファリジャケットなどを取り入れた。ほかにもウエディングシーンにぴったりなスーツも登場。セージグリーンやパステルピンクのベルベットを使ったブークレブレザーは、公式の場にも華を添える1着。コレクション発表はアートギャラリーで行い、アクティビスト兼俳優のビアンカ・ジャガー(Bianca Jagger)の肖像画などを飾った。合わせて、女性がテーラードアイテムを着こなす白黒のポラロイド写真を提示し、関わりを持つ女性たちのコミュニティーに光を当てた。
「キートン(KITON)」はシルクやカミシヤ、リネンといった素材を使って、伝統的なテーラードをスタイルアップ。ローブジャケットやウエストベルトのアレンジが効いたスーツや、“プリンス・オブ・ウェールズ”と称されるグレンチェック柄の定番スタイルをカミシヤとシルクで仕上げた。肩幅を広くとったボーイフレンドジャケットに、ゆったりとしたバルミューダパンツを合わせたスタイリングも目立った。
ガブリエレ・コランジェロ(Gabriele Colangelo)による「ジャーダ(GIADA)」は、テーラードスタイルに定評がある。安定感のあるスタイリングが特徴だが、今シーズンは「形に流動性を持たせて、体をなでるようなシルエット、動きに合わせて洋服も揺れるようなデザイン」に挑戦した。流れるラインのプリーツパンツに、両面ともにカミシヤとウールをブレンドしたノースリーブのオーバーコートを合わせ、背面にはプリーツシフォンをあしらった。ビジネスライクなテーラードをシックに書き換えている。
軽く揺れるような質感とカットが絶妙なディテールで遊び心あふれるコレクションを発表したのは、ダニエル・カルカテッラ(Daniele Calcaterra)による「カルカテッラ(CALCATERRA)」。結び目が特徴のブラトップを重ね、ブレザーやベスト、コートはオーバーサイズに仕上げた。ニュートラルなアースカラーを中心に異なるトーンを重ねる“トン・サー・トン”でまとめて、軽やかさと主張しすぎない洗練を極めた。
「イレブンティ(ELEVENTY)」もまた、明るい色を中心とした爽快感にあふれていた。無地または淡い色合いを通してリラックスしたテーラードスタイルを提案。形を崩したジャケットをそろえ、滑らかな生地を使ってシンプルなルックをさまざまなシルエットで届けた。ゆったりとした作りに、背面を長くして非対称に仕上げたブレザーや、ラメ用のルレックス糸を使って明るく仕上げたジャケットなどが光った。
イタリアのTVスターがフロントローに華を添えた「ジェニー(GENNY)」は、ブレザーにカジュアルなバイクショーツを組み合わせて意外性あるコレクションを発表した。サラ・カヴァッサ・ファッチーニ(Sara Cavazza Facchini)=クリエイティブ・ディレクターは、「何カ月にもわたる自粛生活の反動と、高まる快適さへの欲求」を明るい色合いとミックススタイルで表現した。
池田理代子による漫画作品「ベルサイユのばら」にインスピレーションを受けたコレクションを発表したのは、「ロメオジリ(ROMEO GIGLI)」のアレッサンドロ・デベネッティ(Alessandro De Benedetti)=クリエイティブ・ディレクター。フェミニンな要素とマスキュリンな要素を組み合わせてスーツに落とし込み、18世紀の雰囲気を演出した。ボリュームのあるドレープの肩や袖周りが特徴のトップスは、滑らかなピスタチオカラーを取り入れたり、デニム生地のアイテムを合わせたりしてカジュアルさも表現している。
「フェデリカ トシ(FEDERICA TOSI)」は、エフォートレスな上品さと機能性を組み合わせたテーラードスタイルが光った。温かみのあるハーブの色合いやベビーブルーなど繊細なパステルカラーを中心に、幅広いトーンのデザインを披露。前面のデザインが特徴的なブレザーからフリンジやローブ風のジャケットまでをそろえ、ショートパンツと合わせた。
挑戦的なテーラードスタイルを披露したのは、これからに期待がかかる若手ブランド、「ヤリ(YALI)」。ピア・ザナルディ(Pia Zanardi)創設者兼クリエイティブ・ディレクターは若い消費者に訴えかけるようなスーツのデザインをそろえた。スカートスーツに焦点を当て、ベルベットで裾を飾ったキルティングスーツに、黄色やホットピンクなど目を引く色合いを組み合わせた。リバーシブルでリネンにもなるスタイルも手掛けた。