ファッション

「課題はアプデ」というアジャイルな「A|X」オープン 大平修蔵らセレブも来場

 仕事柄、「ラグジュアリーブランドのジャパン社で働く人って、大変だ」と思っています。理由を挙げればキリがありませんが(笑。でも大変なのは、どの仕事も同じです)、主たるものは「本国とのパワーバランス」「そのイメージゆえ完璧を求められる」、そして「だからこそ日本のスタッフは、さらに完璧を期してしまう」というところでしょうか?「完璧を期す」と「スピード感」の両立は、なかなか難しいものです。正直今は「スピード感」の方が大事な気がしますが、上述の理由で「完璧を期す」という意識とプレッシャーが強いラグジュアリーブランドのジャパン社は、しばし“乗り遅れがち”なことも多く、「どうしたら、もっと自由にチャレンジできるんだろう?」なんて考えることもしばしばでした。

 そんな中、ラグジュアリー企業のジャパン社としては、かなりアジャイル(素早く)に、まずはプロトタイプをスタートして、「課題が見つかったらアプデ」みたいなショップがオープンしたので、皆さんにお伝えしたいと思っています。東京・渋谷のキャットストリートに誕生した「A|X アルマーニ エクスチェンジ(A|X ARMANI EXCHANGE)」です。世界初のコンセプトストアは、デジタルとリアルの双方で楽しめることを目指したOMOストア。ちっちゃなコトから大きなコトまで様々なチャレンジをスタートしましたが、一番ユニークなのは、ダメなら直ぐに修正すればいいじゃんという発想。その発想自体が、ラグジュアリーの世界にはまだまだ珍しいけれど、今っぽいんです。そこで今回は、ラグジュアリーブランドの取材を重ねてきた私が驚いた、つまり、その世界ではかなり斬新なプロトタイプなチャレンジを紹介したいと思います。

アナタのお買い物がディスプレイになっちゃう!?
OMOの斬新なシンボル「A|X」ロッカー

 まず最初に驚いたのは、1階の壁面にあるロッカーです。これは、ECで注文した商品を、この店舗で受け取りたい人のためのもの。ECで注文した商品の店頭受け取りは当たり前になりつつありますが、なんとその商品は、店内から丸見えどころか存在感さえ放っているほどのロッカーに収められ、購入者はコードを入力してピックアップするんです。商品が収められたショッピングバッグは、他の買い物客から丸見えです(笑)。でも冷静になって考えてみると、「ソレって、ダメって決めつけることなんだっけ?」って思いますね(笑)。むしろ、「あ、こんなに買い物している人いるんだ。じゃあ、私も」なんて思う人もいるのでは?ECで注文した商品の店頭ピックアップについてはかつて、ニューヨークにオープンしたノードストロム(NORDSTROM)の旗艦店で、ラックに雑然とぶら下がったショッピングバッグを見たことがありました。正直、美しくありませんでした。でも「A|X」のロッカーは、ピッカピカ。そこから自分が買った商品をピックアップする購買体験は、アッゲアゲかもしれません。

コーヒーのサブスクをスタート
店内で飲んでスマホを充電、それで帰ってもOKです

 次に驚いたのは、店内でコーヒーを飲んでもOK!むしろコーヒーステーションを置いて、サブスクも募っちゃうよ!です。サブスク登録をすると、好きな時間に予約注文できて、店内でコーヒーを受け取ることができます。でコーヒーは、1階の奥にあるフリースペースで堪能しちゃいましょう。ちなみにこのフリースペースにはコンセントがたくさんあって、プレス曰く「ここで仕事していただいても構わない(笑)」そうです。BGMのおかげで、爆速で仕事ができるでしょうか(笑)?ちなみに店内は、撮影もOK!「A|X」とは言え、ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)さんのブランドで、ここまでフリーダムなのは、なかなかの驚きなのであります。さらにコーヒーは11月11日まで無料とのこと!さぁ、キャットストリート界隈にお勤めの皆さん、サブスクはアリかナシか?まずは試飲してみましょう。

 そしてこのフリースペースでは、ライブストリーミングが行われます。これも、ラグジュアリー企業が手がけるブランドとしては、なかなかに珍しい試みです。ラグジュアリーブランドでは、対外的な発信役をデザイナーと最高経営責任者に限っているブランドが多く、ここにショップスタッフが出るのなら画期的!「個」の時代が進んでいる今、これを機に、ラグジュアリーの世界の既成概念に風穴が開くことさえ願ってやみません。余談ですがラグジュアリーブランドに話を聞くと、皆一応に「イメージ・コントロールができないから」なんて話をするんですが、インフルエンサーだって、ショップスタッフだって、ファンだって、「投稿するなら、ベストを尽くす」ので、熱量の高い人ならヘンな投稿はしないんですけれどね……。イメージをコントロールするくらいなら、ポジティブなイメージを発信してもらえるようにエンゲージメントを高める。「A|X」は、そんなチャレンジを開始します。

 デジタルウォールを見ると、最新コレクションはもちろん、上述のサービスに関する案内も現れます。でもそれらはいずれも「ダメだったら、即消去」できる仕様です。冒頭にお話した通り、今回の店舗は「課題が見つかったらアプデ」がコンセプト。その哲学は、デジタルウォールの仕様やデザインからも感じ取ることができます。

 という具合に「最初から完璧」ではなく、「どんどん進化する」ストアになりそうな予感の「A|X アルマーニ エクスチェンジ」の原宿キャットストリート店は、有名な存在になって「来させる」店舗ではなく、いろんな人の生活に「溶け込む・入り込む」ことを目指しているように感じられます。同様のコンセプトは今後、海外にオープンする「A|X」の店舗に取り入れられるようですが、この考え方は他のブランドにも波及して行くかもしれません。

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