メディコム・トイ(MEDICOM TOY)は10月31日まで、同社の赤司竜彦社長がキュレーションするポップアップイベント「アカシック レコーズ 2021(AKASHIC RECORDS 2021)〜まぼろしのパレード〜」を開催中だ。昨年に続く2回目の今回は、場所を東京・渋谷のレイヤード ミヤシタパーク(RAYARD MIYASHITA PARK)3階の「En STUDIO」に移し、昨年以上に規模を拡大。ほかではなかなか見られない“まぼろし”のアートやトイが並ぶ光景は、眺めるだけでも圧巻だ。昨今のアート・トイ市場の盛り上がりには目を見張るものがあり、今回の入場抽選への応募は27万通に及んだという。人でごった返した会場には、名だたる企業の社長や著名人の姿も見え、注目度の高さが伺えた。赤司社長に「アカシック レコーズ」の狙いを聞いた。
――前回の反響は?
赤司竜彦メディコム・トイ社長(以下、赤司):お客さまに好評だったのはもちろん、作家やデザイナーから参加したいという声をたくさんいただけて嬉しかった。それもあって前回よりも規模を大きくしたけれど、今回の応募は27万通もあって全然足りなかった。できる限りたくさんのお客さまに見てもらいたいが、会場に入れたのは3000人前後。3回目はもっと広い場所で開催したい。
――27万通もの応募の感想は?
赤司:ものすごくビックリした。前回は重複応募が多かったので2通目以降を無効にしたが、その作業が社内的にも大変だった。今回は同じ端末から重複応募できないプロテクトをかけた。純粋に27万端末から応募があったという意味で、それはすごくありがたいこと。ご入場いただけなかったお客さまには申し訳ないと思いつつも、販売システムや開催ルール、運営プログラムなどを作り込むいい機会になった。
――改めて、「アカシック レコーズ 2021」の開催経緯を教えて欲しい。
赤司:昨年の開催直前から既に今年の準備に入っていた。毎年、会社のエキシビションがあって、何年かに一度は周年イベントもある。そこで超一流の方々とモノ作りをさせてもらっているが、「アカシック レコーズ」はほんの少し外れたというか、ビーンボールまがいのイベントとして開催していきたい。
――“まぼろしのパレード”というテーマの意味は?
赤司:敬愛するザ・コレクターズ(THE COLLECTORS)の名曲から借りた。徐々に集まっていく作品を見たとき、この楽曲のタイトルが一番しっくりくると思った。前回はエレクトリック・グラス・バルーン(ELECTRIC GLASS BALLOON)の「カルトスター・ガイドブック(CULTSTAR GUIDEBOOK)」から着想を得て、まさにカルトスターを紹介するイベントにしようと思った。今回は「幻の作品を集めたパレードをやろう」みたいなイメージ。タイトルと集まったモノのシンクロ感がいいのだけれど、3回目も同じコンセプトでタイトルが思い浮かぶのか、プレッシャーになっている(笑)。
――キービジュアルに“You Are Free”と書かれている。このメッセージの意味は?
赤司:キービジュアルを手掛けてくれたリーバイ・パタ(Levi Pata)が付けてくれた。僕に対してなのか、催事に対してなのか分からないが、彼には「お前は自由だ」という印象に映ったのだと思う。彼は素晴らしい詩人でもあるので、特にこちらから注文したわけではなく、感じたことをメッセージにして欲しいとお願いした。
――30以上のアーティストやコンテンツとコラボレーションしているが、どのような基準でキュレーションしたのか?
赤司:マーケット全体がコンテンポラリーアートに寄っている印象があったので、それを基準に声をかけさせていただいた。実際に取り組みに至ったのは、ご縁とタイミングがほとんど。見せたかったけど制作がギリギリ間に合わなかったり、次回まで隠しとこうと思ってまだ見せていない作品があったりするので、次回も楽しみにして欲しい。
――特に思い入れの強い作品は?
赤司:協業的なモノ作りを行なっているので優劣はないけど、ナグナグナグ(NAGNAGNAG)との取り組みはいつも刺激的だ。マスプロダクツとは違った共同作業になるので、その分、神経を使うこともあるが学びも多い。ナグナグナグとアン・ヴァレリー・デュポン(Anne Valerie Dupond)の作品は、前回も特に反響が大きかった。
――前回の会場スタッフの衣装は、(海外ドラマの)「ツイン・ピークス(TWIN PEAKS)」の執事からイメージしたと言っていたが、今回は?
赤司:会場がダンススタジオとしても使われている白のシンプルな場所だったので、作品の印象を左右しないシンプルなスタイルでお願いした。
――「アカシック レコーズ」の今後の予定は?
赤司:次回は3回目ではなく、2.5回目として来年の3月にアートフェアトーキョーで開催する。このイベントに来場するお客さまと作家たちに、良いシナジーが生まれる気がするから。あとは、ありがたいことに海外からもオファーがあるので、無理のない程度に広げていきたい。ただし、インディオペンデントなイベントの方向性は変えない。作家にとってもきちんとマネタイズできる場所になればいいなと思っている。