坂部三樹郎による「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」が2022年春夏コレクションを発表した。会場は、東京・新大久保にあるウェスレアン・ホーリネス教団の淀橋教会。場内にはスモークが充満し、光がやわらかく差し込む神々しい空間に、バイヤーやジャーナリストなどの関係者と、坂部デザイナーが開講するファッションスクール「ミー(me)」の生徒が多数集まった。道路標識のモチーフをのせたボディスーツで開幕し、複数のモデルが交差点のように入り混じる演出で、約50のスタイルを披露した。
テーマは“ミニマリズム”。ここ数シーズン、坂部デザイナーが手掛けるエアソールのシューズ「グラウンズ(GROUNDS)」をスタイルの軸に据え、装飾やシェイプをアレンジするコレクションに集中してきた坂部デザイナーだが、「そのやり方に飽きてしまって。ルック数体ではなく、コレクションの全体像をガラッと変えるために、このテーマにした」という。
コレクションの主役は、ジャケットやシャツの前開きをなくし、前後両面を“背中”にしたトップスだ。「背中には、最も自然でミニマルなデザインが宿っている」と考え、襟ぐりやセンターベント、ヨーク、ボックスプリーツなど「背中のミニマリズム」を押し出した。装飾とディテールが少ない分、肩のシェイプを誇張し、構築的なボックスシルエットを採用。これらを、インナーとボトムス、ネックレスという最小限のスタイリングで、色や柄、素材を変えながら約50のルックに落とし込む。いつもよりルックを増やしたのは、“背中のミニマリズム”という違和感のある衣装を「日常的に見せたかったから」。全てのモデルが「グラウンズ」を着用したが、“シューズを見せる”という意識から解放され、スタイルの力みがとれたように思う。
新たなデザインアプローチを見出した坂部デザイナーは、いつもよりランウエイを楽しんでいるように見えた。作り手のワクワクは、受け手にも伝わる。「手に取りたい」と素直に思うコレクションだった。