メンタルウエルネス市場は現在世界で急伸しており、グローバル ウエルネス インスティチュート(GLOBAL WELLNESS INSTITUTE)によると、2020年は1210億ドル(約円)超えの規模になったという。そんな中、「脳を活性化させる」「集中力を高める」という、ブレインパワーを求める分野が人気だ。
脳に働きかけるサプリメントも増えており、近年よく聞くキーワードとして「ヌートロピック(nootropics、向知性薬)」がある。これは脳の機能や能力を高め、認知能力や記憶力を高めるとされる薬品や物質の総称だ。中でも「ヌーペプト(noopept)」という種類のサプリが有名で、主成分は向知性薬として開発された「フェニルアセチルLプロリルグリシンエチルエステル」だ。
今回、アメリカで注目されているヌートロピック系のサプリをいくつか紹介する。
栄養補助ドリンクで手軽に「集中力」を入手
まずカリフォルニア発の機能性ドリンクブランド「トゥルー ブレイン(TRU BRAIN)」はヌートロピックに焦点を当てたサプリで、UCLA卒の脳神経医師たちが開発に係わっている。5種類の目的別に作用するサプリを提供しており、気軽に摂取しすい栄養補助ドリンクになっている。
たとえば脳の活性化を促す“ストロング”と“エキストラ・ストロング”、休憩にコーヒー代わりに頭をスッキリさせる“ミディアム”はLテアニン(お茶に多量に含まれるアミノ酸の一種)やカルチニン(生体の脂質代謝に関与するビタミン様物質で、アミノ酸から生合成される誘導体)などを用いている。一方、ストレスをなくしてリラックスさせる“メロー”や良質の睡眠に導く“スリープ”にはヘンプオイルを配合。
中でも人気№1は“ストロング”は「気が散らずに、自分のピークでパフォーマンスできる」「集中力を高める」「覚醒と冴えを促す」といった効果があるとうたっている。
また脳のアンチエイジングをサポートする“クロックワイズ”(59ドル)というサプリは、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を配合。NAD+はミトコンドリアでのエネルギー産生反応の補因子のひとつで、加齢とともに低下するが、それを活性化させるサプリメントだという。
「トゥルー ブレイン」のお試しパックは10本入りで、価格は29ドル(約円)。ひとつ3ドル以下で、コーヒーやお茶をカフェで頼むよりは安いかもしれない。メンタルに効くサプリを、コーヒー代わりに気軽に飲めるというコンセプトが面白い。
オックスフォード大学と提携したサプリで脳のエイジングケアを
一方、「エリジウム(ELYSIUM)」は オックスフォード大学と共同開発されたサプリブランドだ。細胞のエイジングを専門とするマサチューセッツ工科大学(MIT)のレオナード・ギャランティ(Leonard Guarente )博士と認知力エイジングの専門家であるオックスフォード大学のデビッド・スミス(David Smith)博士が開発に係わっている。
主力製品である“ベイシス(BASIS)」は、細胞のエイジングケアをうたうサプリで、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を配合している。NAD+とは、全ての真核生物と多くの古細菌、真正細菌で用いられる電子伝達体であり、それを増強することでエイジングケア作用があるとされる。
そして脳の健康にフォーカスしたサプリメントが、“マター(MATTER)”だ。認知症や記憶の衰えに抗うために、ビタミンB複合体や従来よりも4倍吸収率のよいオメガ3、アントシアニンなどを配合。1ボトル40ドル(約円)だ。
また「ニューロ ハッカー コレクティブ(NEURO HACKER COLLECTIVE)」は、メンタルパフォーマンス向上のためにさまざまな目的のサプリを出している。
中でも“クオリア マインド(QUALIA MIND)”は集中力を高めて、思考をクリアにする働きがあるといい、DHAやシチコリン、アルファGPCなどを配合している。1ボトル69.50ドル(約円)で販売している。
その人にあったヌートロピックを配合してくれる「フォーミュラ」
面白いところで言うと「フォーミュラ(FORMULA)」は、その人に合ったブレンドのヌートロピックを処方してくれる。まずオンラインで年齢や運動頻度、睡眠時間、飲酒習慣などの生活に関する質問や、「ヤル気を高めたい」あるいは「集中力を高めたい」「エネルギーを高めたい」といった目的についての質問に答えると、自分に合った処方を提案してくれる。1週目、2周目、3周目といったように週毎にフォーミュラが変わっていくのも特徴だ。
主な成分としては、ヌートロピックとして知られるラセタム、アセチルコリン(神経伝達物質)ビタミン、アダプトジェンなどを配合している。
こうしたサプリが求められる背後には、多くの人がSNSやマルチタスクのせいで集中力を保てない、あるいはモチベーションをキープできない、ストレスのために頭が冴えないといった悩みがあるからだろう。また老後の認知症をなるべく発症させないでことへの希求があるからだろう。より集中して、よりパフォーマンスを高めていきたい。その願いを、脳科学にもとづいたサプリが助けてくれる時代が来ているのかもしれない。