“ドキドキする奴”というのがいる――例えば、名城彰耶(なしろ・しょうや)だ。僕は“ショーヤ”と呼んでいる。彼と出会ったのは10年前の沖縄・那覇だった。彼はまだ23か24歳で、カミソリみたいな奴だなと感じた。若さ特有の危なっかしさと屈託のない笑顔を持ち、やんちゃで前のめりにギラギラしていて、そして色気が漂う。名前の響きが似ていることもあってか、“ショーケン”を彷彿とさせた。
そんなショーヤが2022年春夏シーズンにブランドを立ち上げる。ブランド名は「朔(ついたち、TUITACI)」。陰暦で“月の第1日”を指し、「月が満ちてまた欠け、元の状態に戻る。“おわりとはじまり”を表したかった」という。コンセプトは“一歩繰り出す服”で、なるほど、この服を着て夜の街に繰り出すショーヤが目に浮かぶ。ショーヤも「デビューシーズンということもあって、意識的に“自分”を出した」と話す。価格はシャツが税込2万9700円〜、ジャケットが5万5000円〜、パンツが3万3000円〜、カットソーが1万3200円〜、ワンピースが4万1800円、シューズが5万5000円など。「生意気と言われるだろうが、僕がかっこいいと思う全国の個店(セレクトショップ)に声を掛けさせてもらい、限られた販路で売っていきたい」という。ウィメンズ服をここまでしっかり提案してきたのは意外だったと伝えると、「服はやっぱり相手がいて、その人のために気張ってなんぼでしょ?」とショーヤ。また、なるほどね、だ。
“ドキドキする奴が作ったドキドキする服”、ショーヤの新たな“はじまり”を引き続き近くで見守りたい。