先週に続いてアウターが欲しくなる季節。新しいものの選び方にまつわる関心が高まってくれたらとの願いを込めて、今週はファーアイテムに注目したい。
海外ではかねてから、活動家やデモ団体がセレブリティらのファーにカラーボールを投げつけ抗議する様子などがニュースとなり、ファッション界でも目にしたり耳にしたりするようになった。先週のコラムの通り、食用に育てられる動物の外見は捨てられ、バッグや靴などに使用されるために飼育された家畜は中身が捨てられているという現状には問題も多い。
そこでカウンターカルチャーのように人気が上昇しているのが、「エコファー」アイテム。「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のファッションへの挑戦が、やっと選択肢として主流になってきた。その技術は年々磨かれ、今ではリアルファーよりも毛が抜け落ちにくて柔らかく、まるで本物の素材感。色や形状全てがデザイン可能なため、リアルファーやレザーよりもアイデアの具現化に自由がある!
そんなエコファーは、ほぼポリエステル。つまりプラスチック。正直、「あんなに細い繊維にしてるから、マイクロファイバーも出てるなぁ」と残念に思うこともある。しかしエコレザーがリンゴの皮の副産物やキノコ由来の素材から誕生するように、エコファーは現在、なかでもリサイクルエコファーが人気で、ペットボトルから生まれる商品も多い。循環素材はさまざまだ。
私は動物との共存を願っているから、リアルなファーのためにいずれはなくなるべき行為が存在すると考えている。今、私のブランド「パスカル マリエ デマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS=以下、PMD)」が挑戦している取り組みは、食用動物の皮を余すところなくアイテムにすること。捨てられていくジビエの革からアイテムを作っている。中国のファーメーカーで大量に出るファーの切れ端もいただき、バッグに蘇らせている。そして、どうしてその素材を使っているのかも一緒にメッセージとして届ける。「我々の都合で殺さなければいけない」のなら、使えないから捨てるのではなく、使える道を探したい。
と同時に私は、私たちがファーのビジュアルインパクトから脱却しなくてはと考えている。
「もう新しいリアルレザーやファーは買わないわ!今日着ているのは、前から持っていたもの。もう何年も大切に着ているわ!」「母から譲り受けた一生モノの高級バックやファーコートが、一生タンスの中では先代に申し訳ない」「このエコファー欲しい!なんてリアルなエコファーなの?!まるで本物にしか見えない!」ーー。これらは、いずれもサステナブルなファッションチョイスかもしれない。けれどすれ違う人たちにとっては、結果のビジュアルは3つともほぼ同じ。どれも”ファー”だ。どれにも「これはエコファーです!」なんてメッセージは描かれていないし(昔、そんなコレクションブランドがあったな)、「ママのお下がり!」なんてサインも書いてない。結局与えてしまうビジュアルインパクトは、「ああ、やっぱりファーってかっこいい」だ。「かっこいい」と思ってしまった人たちに知識がなければ、それに似た、簡単に手に入るアイテムが選ばれてしまう。供給量が減少するだろうリアルファーの値段は、高騰するかもしれない。ファーへの欲望のシフトが求められている。
となると、果たしてエコファーはビーガンなのだろうか?そのビジュアルインパクトは、動物の革への我々の欲求の象徴ではないだろうか?
我々にはまだまだ考え乗り越えなくてはならない問題が沢山ある。この問題についても、みんなと知識を共有し合いディスカッションを続けたい。