ZOZOは28日、リアル店舗を支援するプラットフォーム「ゾゾモ(ZOZOMO)」を発表した。澤田宏太郎社長CEOは5月、今年度からリアル店舗支援を発表しており、具体的なサービスが明らかになった。すでにライバルである楽天も今秋、物流も含めた在庫一元化支援サービス「楽天ファッション オムニチャネルプラットフォーム(RFOP)」を本格始動するほか、オムニチャネルを掲げてきたロコンドもかねてから自社のプラットフォームで蓄積してきた機能やサービスをパッケージにして無料、あるいはかなり低価格で提供するサービス「オールインワン」を発表。EC大手が相次いでリアル店舗支援を打ち出す中で、いよいよZOZOもリアル店舗支援に本格的に乗り出す。なぜ今リアル店舗支援なのか。
「ゾゾモ」のサービスは、「ゾゾタウン」での在庫確認、販売員向けのアプリ「ファーンズ(FAANS)」、自社EC支援&在庫シェアリング「フルフィルメント バイ ZOZO」の3つ。在庫確認により、月間20億PV超という圧倒的なトラフィックを持つ「ゾゾタウン」から、リアル店舗へ誘導を図れるわけで、ブランド側の期待は高い。マークスタイラーの秋山正則社長は、「もともと『ゾゾタウン』は新規客を取り込む窓口という位置づけで、そこから自社ECモールの『ランウェイチャンネル(RUNWAY CHANNEL)』や実店舗も利用してもらえるようになると、客単価が大きく伸びるというデータが出ている。『ゾゾタウン』から実店舗への送客キャンペーンによってブランド全体としての売り上げを伸ばしていきたい」と期待を寄せる。参加ブランド数は非公表だが、11月1日のサービス開始時点で700店舗が参加する。
ゾゾタウンはアフィリエイトのような形で送客して売れた分の一部を受け取る予定だが、「まずは無料を考えている」(澤田社長)。つまり現時点では、このサービスが使われれば使われるほど、そのままゾゾタウンの売り上げ機会の損失になる。そもそも澤田社長自身がこの「ゾゾモ」について、28日の決算会見で「ZOZOで買うより、実際に商品をリアルで見たり、触ったりしたいと言う人のためのサービス」と述べ、収益を重視していない姿勢を明確にしている。説明を聞いた複数のアナリストからは「収益性の寄与が不透明」「マネタイズの道筋がわからない」と質問も飛んだ。
では狙いは何か。澤田社長は「『ゾゾタウン』で買う以外のトラフィックを増やしたい」と語る。今回の事業を担当した風間昭男ブランドソリューション本部長は「以前は『ファッションを買うならゾゾ』だったが、今は『ファッションのことならゾゾ』とゾゾタウンの事業コンセプトを変えている。『ゾゾモ』の狙いを端的に言うなら、ある人が原宿を歩いていてふと近くの店舗で買い物をしたいなあ、と思ったときに『ゾゾタウン』を見るようになること。これまでは、あるブランドの商品や店舗を知りたかったら、公式サイトを見たり、あるいは店舗に行っていた。そうした行動の起点にゾゾタウンはなっていきたい」と語る。
「ゾゾモ」は決して高いテクノロジーを駆使してはいないが、非常によくできた仕組みだ。ゾゾに出店する一部の大手企業は、効率的な在庫補充のために自社の基幹システムとゾゾをつなぎ込んでおり、リアル店舗の在庫情報をゾゾタウンに表示すること自体は可能だった。ただ実際、取り置きなど店舗の販売員を巻き込む現場のオペレーション変更は、実はブランド側にとってハードルが高い。その点は、販売員向けのアプリ「ファーンズ(FAANS)」を開発し、取り置き情報を販売員に直接通知の行く仕組みを作っている。風間本部長は「こちらが思っていた以上に、ブランド側の導入スピードはスムーズだった。当社には販売員や店長出身の社員も多く、彼ら/彼女らの意見を取り入れて、『ファーンズ』はできるだけ使いやすく設計した。加えて、コロナでオンライン会議が普及したことで、われわれの説明やレクチャーを全国の店長の方々に向けてズームで実施できたことも後押しした」という。ZOZOは、送客手数料となるアフィリエイトフィーの無料期間を明らかにしていないものの、「有料といってもできるだけ多くのブランド様に参加していただけるよう、かなり低く抑えている」(風間本部長)。
風間本部長の率いるブランドソリューション本部は、「ゾゾモ」のようなテナント支援の部署で、すでに数十人の大所帯だ。「ブランド様からはいろいろなご要望をすでにいただいている。『ゾゾモ』以外にも、水面下ではリアル店舗の支援に向けて多くのプロジェクトを進めている」という。