TSIホールディングスは29日、北海道・上川町と「持続可能性な地域づくりに向けた包括連携協定」を締結した。東京・青山本社で下地毅社長と佐藤芳治上川町長が協定書を交わした。TSIのブランド開発やアパレル製造のノウハウを活かした特産品、体験型ツアーなどの開発により、地域の魅力創出や課題解決を目指す。
上川町は北海道の中央部に位置し、層雲峡温泉街や大雪山国立公園など豊かな自然環境を有する人口約3500人の小さな町。協定締結に至った背景について、「これまで日本の人口は東京一極集中だったが、コロナ禍で状況は変わりつつある。これを契機に魅力を発信し、わが町に光が当たる状況を作りたいと考えた」と佐藤町長。一方、下地社長は「アパレルはこれまでのように都市部で服を売るだけでなく、地域社会にも入り込んで新しい接点を作り、事業機会を広げていく必要がある」と述べた。
連携プロジェクトの柱は上川町の豊かな森林資源の活用。具体的には、木材を使った商品の企画・販売や体験コンテンツの開発、林業従事者のチェーンソーによるケガを低減する機能服、学校制服の共同開発などを計画している。キャンプ場や子供の遊び場、獣害防止のための林道整備などでも協力する。
下地社長と佐藤町長の出会いは約3年前。上野商会の社長(2018年11月〜2020年2月)時代には傘下ブランドの「マナスタッシュ(MANASTASH)」で上川町とのコラボアパレルを企画するなど、アパレルと地方行政の協業について可能性を探ってきた。「目指すのは短期的なメリットではなく、アパレル企業と自治体が協力し、新しいライフスタイルを共創するという一つの成功モデルを作ること。じっくりと取り組みを進めてきたい」(下地社長)。