アダストリアは11月1日付で、自社健康保険組合「アダストリア健康保険組合」を設立した。従来は東京ニットファッション健康保険組合に加入していたが脱退した。福田三千男代表取締役会長は「販売員の人材獲得は年々難しくなっている。安心して働ける環境を作ることで、長く活躍してもらうことが可能になる。“健康”は今後の働き方を考える上で非常に重要なキーワードの一つ」と話す。自社健保設立により、販売員の主軸である若い世代の女性がより働きやすい環境を目指す。
自社健保の組合員は「将来的に9000人規模となる」見込み。そのうちの「60%が地方在住で、平均年齢は32歳。現場(店頭の販売員)はさらに若く、28歳前後」という。自社健保設立により、保険事業の内容を若い世代の女性が各地にいるという自社の特性に合わせたものにしていく。保険料は社員1人あたり、年間で数千円〜1万数千円ほど下がる見込み。会社全体では2億〜3億円ほど保険料が下がる計算だ。
自社健保により注力する事柄の一つが、健康診断だ。従来は健保の提携病院が都市部中心だったこともあって、健康診断受診率は「50%を切っていた。これを100%に近づけていく」。そのために、アダストリアが出店する全国800〜900の商業施設それぞれの近隣で、必ず1つ提携病院を設ける。「健康診断の受診率が上がれば、疾病予防になり結果として保険料も下がるはずだ」。
その他、婦人科検診の自己負担の廃止や低減、出産育児一時金の増額などを検討している。福利厚生としては、組合員の特性に応じた内容でカフェテリアプラン(組合員それぞれが与えられたポイントを使って自分で内容を選べる制度)を導入する。
自社健保となり、健保と会社とで連携が強化されることで、国が各健保に実施を義務付けている“データヘルス計画”もよりスムーズになるという。残業時間やストレスなども見える化し、“健康経営”を推進。将来的に経済産業省による「健康経営優良法人」認定を目指す。「ここ2〜3年で産休・育休の取得者も増えており、出産を機に退職してしまうケースは減っている。米国では50〜60代の販売員もたくさん見る。販売員はコミュニケーションのコアであり、経験がある人だからこそできることは多い。女性が働き続けることを念頭に、現在人事制度改革も進めているところだ」と福田会長は話す。