REPORT
21年目の第一歩はどこにも何にも属さない新しい「マルニ」
リリースに書かれていた言葉が、印象的だ。「素材や色や形が具体的な意味を持つことなく、どの年代や文化に属することもなく独特な視覚的言語となり語りかける」。
「マルニ」は昨年、ブランド設立20周年を迎えた。1年前のショーは20年の軌跡を描くように無地の服から少しずつ色柄を増やし、クライマックスには咲き誇る花柄のシーンへと展開。前シーズンは荒野をさまよう女性像を通じて、“次なる一歩”を探るかのようなショーを見せた。
そして21年目を迎えた今季は、過去を振り返ることなく新たな一歩を踏み出した。冒頭の言葉通り、○○年風とか、○○の国から着想を得た、といったコレクションではない。さらにアイテムの多くが、シャツやドレスといった従来の洋服の枠組みにも収まらない。一つひとつのアイテムもコーディネートも自由な発想から生まれている。
大切なのは、色と色の組み合わせや、レイヤードのバランスが見ていて心地良いこと。今季の「マルニ」に袖を通す行為は、着るというよりもダイナミックな色と布をまとうアート制作に近い作業かもしれない。
会場の中央には抽象的で大きなオブジェが並び、アート展の中でショーを観るかのような環境を作った。レゲエのリズムに乗って歩くモデルの足元を見れば、シューズのヒールの形もオブジェと同様に構築的で、小さなアートのようだ。
ストレッチの効いたボディースーツの上にアイテムを重ねるレイヤードスタイルが基本。ドライウールのコートやサテンのブルゾンの上にレザーのエプロンを重ねたり、ニットで作ったメッシュドレスの上にもう一枚キャミソールドレスを合わせたり。丈の長いジップアップブルゾンはウエストをリボンでマークしてドレス感覚で着る。
青、赤、黄などの原色使いに加え、大きな布を大胆に斜めにカットしたり、部分的にくり抜いたりといったカッティングが服にダイナミズムを与える。ワイドパンツは脇からさらに生地をはみ出させてさらにボリューミーに。厚みのあるボンディングサテンのトップスは片側の布を寄せて丸みを帯びたイレギュラーなボリュームを作る。波打つ裾や、繰り返す円形モチーフを見ていると明るく前向きな気持ちになるから不思議だ。