ファッション

盛況「ファッションワールド」で見たサステナビリティ最新動向 差別化が課題

 合同展示会「ファッションワールド東京2021秋」は、10月18日から20日まで東京ビッグサイトで開催し、来場者数は3日間合計で前回比150%の1万9383人となった。特に前回から本格スタートしたサステナビリティを切り口にしたゾーンは出展社数が倍増したこともあり活況で終日多くの人でにぎわった。アパレルとサステナビリティの現在地が見える同展の様子をリポートする。

 出展社数は約200社で、前回から倍増。出展者の大半は繊維商社やテキスタイルメーカー、染色、副資材、業界団体など川上の企業だ。来場者は日を追うごとに増え、最終日は7368人となった。ただしサステナビリティに関してリサーチ段階の企業が多く、ブース内で即商談にはなかなか至らないという声が多い。充実しているセミナーへの参加や情報収集を目的とする来場者が多いようだ。

 2004年に発足した東レ合繊クラスターも同展に今回初出展した。運営する木下淳史東レ北陸支店支店長は来場者の反響から「動き出している感触がある。2021年は後で振り返ればあの時が(アパレルがサステナブルに舵を切る)ターニングポイントだったと思う年になるのではないか」と手ごたえを語る。同クラスターは北陸の中小企業を中心とした89社が加盟し、高機能・感性を強みにしている。今回はその中でも植物由来高機能、非フッ素撥水などサステナブルに通じる切り口で展示していた。このように、サステナビリティのフィルターをかけることで、自社や団体の強みを再発見・提案するケースは多い。

 東レインターナショナルの「トレイン(TORAIN)」もそのひとつだ。従来から高機能素材を得意とする同社だが、そこに「もっと長く使うことはできないか」という観点を入れて商品開発を進めた。結果、加水分解に強い防水生地とシームシーリング技術を組み合わせた機能ウエアが誕生した。防水・透湿・防風性を高めたことで通常3年程度で始まる加水分解が、「トレイン」では10年と製品寿命が長くなったという。素材にはリサイクルポリエステル糸を採用。同社は2025年にすべての「トレイン」製品への環境配慮型素材の採用を目指しており、今回の提案はその第一歩となる。

 出店者数が増えたことで差別化が課題になっている。再生ポリエステル、生分解性素材、裁断くずや落ち綿の活用は特に多くが打ち出しておりプラスαの特徴が求められる。豊島の「エコリッチ(ECORICH)」は裁断くずから生まれた糸で、染色を行わず最大48のカラーバリエーションをそろえる。デザイナーにとっては嬉しい選択肢だ。また同社の漂着ペットボトルゴミを原料とした繊維「UpDRIFT」は、消費者が参加しやすい仕組みをセットで提案する。沖縄の縄文企画と日本旅行の2社と連携して教育旅行で利用できるプログラムを訴求。沖縄・八重山諸島の海洋ごみ問題に関する事前学習、現地でのごみ回収活動の実践、回収したごみから繊維加工を経て製品化したものを学生の手に戻す循環型のプログラムを提案している。

わかりやすいメッセージ、情熱的な接客

 サステナビリティに関して“勉強中”の来場者が多い中で、いかに目立ち、わかりやすくメッセージを発信するかは重要だ。そういった意味で三井物産アイ・ファッションが仕掛ける「バナナクロス(BANANA CLOTH)」は、キャッチーなビジュアルでひときわ目をひき、前回に引き続きにぎわっていた。同ブースには3日間を通して、約2000人が来場したという。米崎尊路三井物産アイ・ファッションMD企画部マーケティング室室長は「昨年より来場者からの専門的な質問が増え、サステナビリティに関する知見が溜まっている印象を受けた」という。「バナナクロス」は、「ダブレット(DOUBLET)」が2022年春夏コレクションで採用するなど認知が広がっている。

 タキヒヨーは、落ち綿を再紡績した「ザニューデニムプロジェクト」を前面に打ち出した。中米グアテマラのアイリステキスタイルと2018年にディストリビューター契約を結んだプロジェクトだ。3年が経過した今、いわゆる“ニュース”ではないが、プロジェクトを立ち上げた杉山雄大サステナブルチームチーフがブース内で言葉を尽くして語る様子に来場者は引き込まれる。紡績業と併せてコーヒー農園も経営するアイリステキスタイルは落ち綿も堆肥として用いるなど循環を自社内で実現している。消費者に伝えたいのはきっとこういったものづくりの背景だ。

 会期中に数多く開かれるセミナーの中では、開発途中のイノベーションの話が飛び出すこともある。世界最大級のデニム生地メーカーであるイスコは、山崎彰也イスコジャパン社長が登壇し、香港のエイチケーリタ(HKRITA)とのパートナーシップ締結を発表した。同社はリサイクル素材を最低50%以上混合する「イスコ・アールトゥー・フィフティプラス(ISKO R-TWO™ 50+)」を発表するなど、リサイクル素材と再利用素材の活用を進めている。エイチケーリタの技術「グリーンマシーン」は綿とポリエステルの混合素材を完全に分離し、大規模にリサイクルすることができる画期的な技術でイスコはデニムブランドとして初めてライセンス契約を結んだ。

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