征矢需さんは高島屋の日本橋店と新宿店の紳士靴 売り場に週4日立ち、持ち込まれた客の靴を磨く。何年も放っていた靴でも、革がよみがえったように輝き出す。これが自分の靴か、信じられない。客は一様に驚く。すると2度、3度と訪れるようになる。その感動を周囲に話し、また新しい客が訪れる。革靴の奥深さを知り、新しい商品も買い求める。
征矢さんは販売員でも靴磨きの専門スタッフでもない。商品を管轄するMD本部に所属し、社内では「靴の征矢」して知られたベテラン社員だ。主に紳士雑貨の商品畑を歩き、全国の店舗の紳士靴の品ぞえを決めるセントラルバイヤーも務めた。英国、イタリア、日本など各国の靴メーカーを相手にタフな商談を手がける一方で、週に1度は売り場で接客して客の声を拾った。そのとき痛感したのは手入れ方法が知られていない現実だった。
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