ゴールドウインは、中心産地であるベトナムが新型コロナウイルスによる2カ月半のロックダウンに見舞われ、売上高ベースで30億円程度の影響を受けたと発表した。基幹ブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の主力であるダウンジャケットへの打撃は軽微だが、近年人気を集める防寒ブーツ“ヌプシブーティ”の納品が遅れる。ロックダウンは10月初めに解除されたため、現在は急ピッチで生産を進め、巻き返しを図っている。5日に行われた同社の2021年4〜9月期決算説明会で渡辺貴生社長が明らかにした。
同社は中国生産の一極集中を避ける狙いで、ベトナムへの生産移転を進めてきた。ベトナムの生産比率は12年3月期の18%から22年3月期には56%に達する見通し。「ザ・ノース・フェイス」のアパレルやシューズなどの多くがベトナムで作られている。サプライチェーンについて渡辺社長は「当面は大きな産地シフトは考えていない。ただ、日本でのカスタマイズ生産をはじめ、ニーズに対応した生産体制は整備していく」と説明した。
足元の秋冬商戦では、影響の少ないダウンジャケットの拡販に尽力する。またシーズンの持ち越し商品や他の商品の入荷の前倒しなどでMDを修正する。
4~9月期連結決算は、売上高が前年同期比21.1%増の382億円、営業利益が同166.8%増の32億円、純利益は同321.9%増の26億円だった。東京の2度の緊急事態宣言や、7月以降の感染拡大によって都心店舗の来店客が伸びず、売上高は期初見通しを下回った。しかし、EC売上高が同20.8%増と好調に推移したほか、経費を抑制した結果、営業利益と純利益は期初見通しを上回った。
事業別では、「ザ・ノース・フェイス」を含むパフォーマンス事業が回復基調を継続。登山やマラソン大会は自粛傾向にあったが、密を避けるレジャーとしてアウトドアへの関心は依然として高く、売上高は同47.3%増の132億円となった。ライフスタイル事業は、日常生活での高機能ウエアのニーズが高まり、同11.8%増の222億円を記録。一昨年の過去最高値を上回った。ファッション事業は、インバウンドがない中、販路拡大によって堅調をキープし、売上高は同2.2%増の27億円だった。
22年3月期は期初予想を据え置く。売上高が1000億円、営業利益が140億円、純利益が103億円。売上高と利益のボリュームが大きい10~12月期の結果を踏まえ、「見直しが必要な場合には速やかに修正値を開示する」(渡辺社長)。