「COP」という言葉がニュースで取り上げられている。「COP」とは、「Conference of the Parties」の略。加盟国が、地球温暖化を防ぐための枠組みを議論する国際会議のことだ。こうしたニュースなどを通じて「カーボン・ニュートラル」という言葉を耳にした人も多いだろう。「ゼロ」ではなく「ニュートラル(中立)」。「二酸化炭素の排出を完全にゼロに抑えることは現実的に難しいため、排出せざるを得なかったぶんについては同じ量を『吸収』または『除去』することで、差し引きゼロ、正味ゼロ(ネットゼロ)を目指しましょう」という意味だ。
温室効果ガスの排出を抑えるために私たちができることには、以下のようなものがある。
・必要のない照明はこまめに消す
・エアコンの設定温度は適温にする
・徒歩や自転車、公共交通機関を利用して、できるだけ車を使わない
・アイドリングストップをする
・シャワーのお湯を出しっぱなしにしないetc.
よく目にする項目だし、地球で、自然と共存して生きていく上でとても大切な生活習慣だ。でも、それではもう地球の環境汚染のスピードに対応できない。だから「カーボン・ニュートラル」は、ファッション業界においても大事な目標になってきた。そもそもファッションは、素材を農業と畜産に頼り、生産・流通させ、さらにラグジュアリーの世界では年に数回、世界中のファッション関係者を大移動させて、飛行機を動かして、交通機関を使って春夏/秋冬という季節性を発信してきた。ファッションが生まれるまでの工程における「カーボン・ニュートラル」実現への動きは今、世界中で始まっている。例えば「シャネル(CHANEL)」は、2025年までに再生可能エネルギーに完全に切り替えると発表。「バーバリー(BURBERRY)」は、コレクションの発表をカーボンニュートラルで実施した。
議論は、コレクションを発表するブランド側のみならず、それを見に行くバイヤーやメディア、関係者にまで及んでいる。世界のファッション・ウィークに参加するデザイナーやバイヤーが移動に伴い排出する二酸化炭素の年間総量は、なんと24万1000t。ニューヨークのタイムズスクエアを58年間、ライトアップできる量に匹敵するという。音楽界ではコールドプレイが地球環境を考えてワールドツアーを行わないと発表したのが話題になったが、かつての「ディオール(DIOR)」や「H&M」のように、ショーに来る人を同じ飛行機に一度に乗せてVIP輸送するなんて“粋”が必要かもしれない。
だが、それでもまだ、地球環境汚染のスピードにはついてはいけない。もう手遅れと言っても過言ではない状況にいる私たちが今生み出せる、最大のパワーは、消費者が求める「WANT」を変えていくこと。それが、どんな取り組みよりも効果的だと考えている(次週に続く)。