アシックスの2021年1~9月期連結決算は、売上高が前年同期比29.8%増の3222億円、営業利益が同10倍の357億円、純損益が190億円の黒字(前年同期は34億円の赤字)に回復した。同期で売上高3000億円を超えるのは4年ぶり。日本事業と北米事業も黒字に転じた。
コロナ禍における健康意識の高まりを受けて、パフォーマンスランニングが大きく動いた。日本、北米、欧州、中華圏、オセアニアで2ケタ増収を記録し、売上高は同38.0%増の1674億円だった。“ノヴァブラスト(NOVABLAST)”をはじめ若い世代に向けたランニングシューズが支持されたほか、国内外の大会でエリート向けシューズ“メタスピード(METASPEEED)”の着用選手が活躍し、認知向上に貢献した。「ここ数年、ランニングシューズの商品開発に注力してきた。オリンピックなどでブランド認知が拡大したほか、コロナによるスポーツ意識の高まりも追い風となり、国内外で商品力が評価されている」と廣田康人社長は語る。
オニツカタイガーの売上高は同19.5%増の303億円。訪日客による消費がない中、中華圏と東南アジア、国内顧客の売り上げを伸ばした。映画「シンデレラ」とのコラボモデルをはじめ、戦略的な商品開発も奏功した。
コアパフォーマンススポーツの売上高は、同29.7%増の352億円。日本でワーキングシューズが売れたほか、北米と欧州で試し履き施策を行ったテニスシューズがよく動いた。スポーツスタイルの売上高は同19.5%増の265億円。アパレル・エクィップメントは同18.6%増の253億円だった。
デジタル施策も奏功した。ランニングアプリ“ランキーパー(RUNKEEPER)”などでECのタッチポイントを増やし、EC売上高は同28.2%増の466億円を記録。公式オンラインストア「ワンアシックス(ONEASICS)」の会員数は約500万に増えた。「(アプリやEC会員の)数字は順調に伸びており、マスデータが蓄積されている。次は、定期的にサービスを使ってもらうフェーズまで押し上げるほか、データを元にした商品開発に努めたい」と廣田社長。
2021年12月期の連結業績予想は、売上高を3950億円に据え置く。一方で、販管費コントロールの強化により、営業利益は200億(前回予想は145億円)、純利益は40億円(同25億円)に上方修正する。
公式パートナーを努めた東京オリンピック・パラリンピックは、新型コロナの影響で無観客開催となった。廣田社長は「会場での物販がなくなったことから、関連アイテムの売り上げは予想を下回った」と説明するも、「赤いジャケットを着た日本選手団や、イタリア、フランス、ブラジルなどわれわれがサポートしたアスリートが素晴らしい活躍を見せてくれた。ブランド価値が向上したのは間違いない。今後、良いイメージをどう商品とマーケティングに落とし込むかが重要だ」と語った。