東京・原宿エリアの空室化が問題となっている。コロナショックを受けてテナントが撤退、その後賃料が下げられるケースもあるが、もともとが破格ということもあり新規入居者が決定していない。一方で、京都のメインストリートの一つ、寺町通(寺町京極商店街)ではこの1年で古着店の出店ラッシュが続いている。この動きは、原宿再浮上のヒントになるのでは?そう仮説を立てて、現地を取材した。
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まず話を聞いたのは、「古着屋ジャム京都四条店」を2021年4月、“低価格(平均価格帯2100円)”や“エコ”を掲げる「ロエコ・バイ・ジャム京都店」を7月に寺町通にオープンしたJAM TRADING(大阪)の福嶋政憲社長だ。
「古着ビジネスは、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した」
WWD:原宿の空き物件に古着店が続々出店するのでは?との見立てについて、思うところを聞きたい。同じような現象が京都でも(先行して)起きているのではないか?と見ている。
福嶋政憲JAM TRADING社長(以下、福嶋):京都、原宿のみならず、古着についてはどのエリアでも、“今がビジネスチャンス!”と積極的に出店する企業が多い。寺町通のような商店街の場合、老舗もある中での出店なので、これまで異質だった古着店が目立っているということもあると思う。
古着ビジネスはお客さまを選ぶニッチなものだったが、古着ブームにより購買層が広がり、また彼らへのサステナブルな考え方の浸透もあり、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した。コロナ禍で新品アパレル店の撤退が続き、大家さんは次のテナントも物販が良いと考えてもなかなか手が上がらず、空室状態が続くことで家賃も下がり、そんな状況の中で古着店も受け入れられ始めた。風当りの変化を感じている。
とはいえ原宿エリアの家賃はまだまだ高く、すぐに古着店で埋まるとは考えられない。また原宿には、地方や海外からのお客さまも多いので、その点では地域差のあまりない(なくなった)古着店が勝負しづらい一面もある。
WWD:京都のユーザーに、古着はどう受け入れられている?また、そこに東京や大阪との違いはある?
福嶋:京都は学生の街なので、先輩からユニホームや日常着をもらい受ける文化が根付いている。流行りについては今や東京、大阪と変わらないが、比較的おとなしめの色や柄が好まれる傾向がある。
WWD:他県からの進出を嫌う傾向があるとも言われる京都だが、出店のしにくさはあった?
福嶋:なかった。加えて、寺町京極商店街の理事長を務めるセレクトショップ、ロフトマンの村井修平会長から「空きテナントが埋まって良かった。寺町は商売人の通りだから、頑張ってやってください」と言われたことは、とても心強かった。
WWD:古着店が増えることに対して、「街の景観が……」などと危惧する一定層がいると思う。何か対策は?
福嶋:行政や商店街のルールを順守するのはもちろん、極めて基本的はことだが、近隣の皆さんへのあいさつや地域の清掃などを積極的に行い、地域の一員として街づくりに寄与し、認められればと思う。
WWD:次なる出店候補地について聞きたい。
福嶋:京都にはすでに3店舗を構えているので、同エリアでのこれ以上のドミナントは考えていない。東京も原宿にエリア最大規模の古着店を出店したばかりだが、物件との出合い次第では下北沢に出店したい。また札幌、仙台、名古屋でもリサーチを続けている。
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続いて、地元企業を代表してヒューマンフォーラム(京都、岩崎仁志社長)の岩月臣人事業部長に質問をぶつけてみた。同社は、10月に祖業である「スピンズ」(全国に33店舗を展開)の原宿店を業態転換。3割ほどだった古着の扱いを100%にした。さらに、“ユーズドを拡張する進化型古着屋”をうたう「森」を20年12月、大阪・中崎町から京都・新京極(寺町と隣接する通り)に移転している。
「古着は、“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”である」
WWD:古着ブーム、また古着ビジネスの隆盛について、どう感じている?
岩月臣人ヒューマンフォーラム事業部長(以下、岩月):古着は“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”だ。在庫を抱えても、それが目減りすることはない。事業を継続していけるかは別として参入障壁も低く、古物商免許さえ持っていればすぐに始められる。実際、古着ビジネスをスタートする大学生などを目にするようになった。“サステナブルだから”という理由でユーザーが古着を選び、起業する側も同じ理由から古着ビジネスを選択している。
WWD:京都が“おひざもと”であるヒューマンフォーラムは、古着における進出組をどう見ている?
岩月:とてもありがたいと感じている。一点物の集積である古着には宝探し感覚があるが、それが街中に1店舗だけでは、“出掛けよう”というスイッチをONにするのが難しい。一方で、街中に古着店があふれていれば、ユーザーのモチベーションは上昇する。“点”として当社だけが良ければいいのではなく、“面”や“立体”として古着、そして街全体を盛り上げていけたらと思う。
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