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就任から半年、ユナイテッドアローズの松崎社長が語る「危機と挑戦」

 ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、以下、UA)の松崎善則社長が10月5日、2022年4〜9月期決算説明会に登壇し、コロナ禍での経営動向や今後の重点施策について語った。4月に社長に就任してから半年。セレクトショップの雄と言われた同社が抱く危機感と、相次いで新たな取り組みを立ち上げる狙い―レーベルの立ち上げ:D2Cの「シテン(CITEN)」、インフルエンサーを起用した「マルゥ ユナイテッドアローズ(MARW UNITED ARROWS)」、ヨガを軸としたウィメンズの「トゥー ユナイテッドアローズ(TO UNITED ARROWS)」、商標権を承継したサーフショップ「カリフォルニアジェネラルストア(CALIFORNIA GENERAL STORE)」プライベートサービスデスクの設置―などを自らの言葉で説明。ECのリプレイスメントなど基幹システム構想と並行して、2025年度内に向けたPLM(製品ライフサイクルマネジメント)システムと在庫分析システムの導入によるサプライチェーンのデジタル化も控えている。業績や店舗閉鎖などネガティブな部分がある中で、社員のモチベーションを高め、接客を中心とした品質を高めることで、「お客様の期待に応えること」の重要性にも言及した。質疑応答と含めて、会見の発言をレポートする。

松崎善則社長(以下、松崎):私からは、このハーフターム(中間期で)、今後大事にしていきたい考え方をみなさまに共有させていただきたいと思います。私が4月より社長就任いたしまして、半年強が経過しましたが、今期も引き続いて厳しい状況が続いている部分が多々あって大変ご心配をおかけしていることと存じます。

 改めて、前期からの業績動向を大枠ダイジェストすると、計4回の、延べ11カ月以上に及ぶ緊急事態ということで、ネガティブインパクトが非常に大きかったというところです。

 この資料の通り、コロナが始まった昨年の第1四半期(4〜6月)は、緊急事態によって2カ月間店舗がほぼすべてクローズしたことで売り上げが非常に苦戦しました。第2四半期(7〜9月)は一時的に需要は回復したのですが、第1クオーターの在庫消化を優先したことで利益面が非常に苦しかった。第3四半期(10〜12月)は回復基調がいよいよ見られるかと思われたが、再度秋口から感染が広がって、第4四半期(1〜3月)についても再度緊急事態宣言ということで、いつ(コロナ禍が)開けるかどうかわからない状況下で、在庫の持ち方も施策も含めて、社内全体、右往左往という形で昨期は終えました。

 今期から、ようやく一新してやっていこうと新体制の中で取り組みを進めていますが、4月下旬から再度宣言が発令され、7月以降も第五波ということで、この上半期は想定した回復シナリオには残念ながらもう一歩届かない状況になっております。緊急事態がようやく明け、気温が低下した先月中旬以降から回復が顕著に見られています。足元、11月に入っても回復が想定以上に見られているということで、お客様の動向にも期待が高まっており、準備を進めている状況です。

今期方針は「選択と集中」「新たな挑戦」「経営理念の再浸透」

 今年度のグループ経営方針として、「持続的成長と、未来に向けた大改革~新時代のお客様大満足」を掲げています。文字通りでございますが、この厳しい経営環境におきまして、従来のやり方ではお客さまのご期待、ご支持をいただくのは難しいということで、「大改革なくして持続的成長は果たせない」という危機感を持っての方針です。この方針の下、営業利益生産性計画(一人当たり営業利益計画)の必達、連結粗利益率(50.7%)の必達に向けた施策と、サステナビリティやDXの取り組みを進めている最中でございます。

 大改革というタイトルを進めていくうえで、重要なポイントを3点考えています。一発逆転を狙いたいところなのですが、大改革には不断に継続していくことが非常に重要と考えておりまして、文字づらですとあまり目新しいものではないのですが、一つ目は“選択と集中”です。“選択と集中”によってクオリティを上げるいう部分を挙げています。優先順位の高いものに専念することで強い利益率の体質を構築します。前期から約10%の店舗をクローズする(計画を打ち出し)、今、10%強になる見込みです。店舗やレーベルを閉めることは、少なからずご支持いただいているお客さまを想像すると、大変心苦しくて難しいものではありますが、この下半期も引き続き選択と集中を既存取り組みについては進めてまいることで、強い経営体質を実現していきたいと思います。このためには、何よりもクオリティが重要で、ヒト・モノ・ウツワのすべての領域において活動の質を高めていくことで、“選択と集中”が有意義なものになっていくと考えております。

 まずはこの緊急事態が明けた先月から、店頭にお戻りになるお客様が多数見られています。(過去に築いてきた接客力、おもてなしの心が薄れないように)リアル店舗の接客の質(を上げること)が既存店舗の回復の大きな柱だと考えています。実店舗の強みを取り戻していくことを主軸にこの後半戦は臨んでいきたいと思います。この実店舗の回復によって、今後進めていくOMO(店舗とECの融合)施策、ECのリプレイスなども控えておりますが、この成功につながっていくものと考えています。

 二つ目は、“新たな挑戦”が積極的になされている状態を目指しています。これは“選択と集中”と相関するように捉えられる部分もあるかと思いますが、規模の大小を問わず、“新たな挑戦”を積極的に行い、次の兆しをつくっていくことが、この不透明な不確実な時代においては重要だと考えています。過去の成功パターンに依存せず、スピード感を持ってトライ&エラーを繰り返すことが必要で、時代の動きが転換期に当たる今、大きな施策一つで大逆転を狙うということではなく、先ほどIR広報部長からいくつかの事例を説明させていただきましたが、こうしたものを繰り返していくことで、次の機会を作っていくことを続けてまいります。

 当社はセレクトショップとして先駆的であること、新しいことを提案し続けてくれるであろうことをお客さまから期待されているはずですので、それが当社の優位性を築いてきた原動力の一つでもあるので、“選択と集中”によって得られたものを、新たな価値創造(に向けた“挑戦”)につなげていくことをこの下半期もより強く意識していきたいと思っています。

不安定な時代にこそ、“経営理念の浸透”を重視

 三点目は“経営理念の再浸透”を掲げております。(経営理念:「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける。」)。これは社員メンバーのエンゲージメントをより強め、高め、お客様への価値提供が薄れていかないために掲げていることです。当社が事業活動をしていくうえでの絶対的な拠り所が理念だと考えております。この理念によって、ユナイテッドアローズがユナイテッドアローズで居続けていけるわけであって、こういった不安定な中で、社員メンバーが自分たちの存在意義や志、なすべき方向性にゆらぎが出そうなときこそ、“経営理念の浸透”が重要になります。コロナ禍で一旦中断している、とくに出張を伴う店舗の巡回や理念セッションを下半期は再開して、全社員メンバーに私たちが目指すところ、社会に果たしたい価値は何かということを、一緒に考えて、全社一丸となって乗り越えて行きたいと考えています。このコロナ禍に伴って、店舗人員の見直しなどを一部行ってきましたが、私たちが築いてきた強みを喪失しないように、店舗メンバーの士気を維持向上する取り組みを進めてまいります。繰り返しですが、この上半期は想定した回復には及んでおりませんが、申し上げた3点(“選択と集中”“新たな挑戦”“経営理念の再浸透”)を通じて当社は変革を進めており、手ごたえを感じているところ多数感じているところです。


【メディアからの質疑応答】
――他社の新興系SPAやセレクトに比べるとやや回復が遅いように思う。コロナという状況は同じだが、どういったところがUAにとっては難しいのか教えてほしい。

松崎善則社長(以下、松崎):他社比較でちょっと回復が遅いのではないかというご指摘・ご質問ですが、精緻にまだ捉えきれていない部分もあるのですが、一つはお客さまの年齢層の違いがあるなと捉えています。コロナの緊急事態が開ける前から、20代、30代前半の若い方の外出はある中で、われわれが主としている30代、40代の方の動向、外出が非常におとなしかった。もう一つは、従来からですが、ビジネス衣料の回復は見られてきていますが、まだまだコロナ以前に比較するとビジネス衣料の完全な回復には及んでいないという状況です。対応はしていますが、そこがまだ実を結んでいない。そういった点が若干の弱含み担っている点と捉えております。

――10月から始めている富裕層向けサービスの件で。ファッションだけでなく富裕層向けに衣食住を含めて提供していくというが、従来から手がけてきた百貨店も富裕層向けサービスを強化している。UAとしては?

松崎:富裕層向けのプライベートサービスデスクですが、おっしゃるように、以前より百貨店で外商という形はあると思いますけれども、われわれ、今回このコロナにより捉えたのは、ECで年間100万円以上お買い上げになられるお客さまが200人近くいらっしゃる。多いか少ないかといえば、金額だと2億円ぐらいの売上げになり、まだまだ潜在的なものがあると考えています。年間100万円という切り方をしましたが、50万円ぐらいだとまた増えてくるのですが、ECでもかなり年間で購買をいただいているお客さまに対して、何のサポートもできていないねと。全社のDXというところにも絡んでくるのですが、まずはそういったお客さまの特性というか購買について、よりサポートを深めていこうということです。これが百貨店の外商と違う点でいうと、百貨店が抱えていらっしゃる団塊層ではなく、われわれは団塊ジュニア層の購買が顕著でして、新しい形の富裕層というお客さまについては、百貨店には行かれていないお客さまが多いということで、われわれに商機があるのではないだろうかと捉えています。

――サプライチェーンについてお尋ねいたします。東南アジアでコロナの感染拡大で商品に遅れなどが出ている企業が出ている。ユナイテッドアローズは該当されているか。二点目が、人権問題が取り上げられている中で、海外を含めたサプライチェーンの透明化や見直しの考え、今後取り組む予定のものは?

三井俊治IR広報部部長:当社の産業に限らず、ベトナムの感染拡大で工場が止まっていたり、中国で電力の問題で工場が止まっていたり、そういう問題が当社でも影響が出ています。秋冬商品の納期遅れが若干発生しています。ここについては常に状況が変わっているので、どういうキャッチアップができるか検討しながら対応を進めているところです。

松崎:人権問題等も含めて、海外生産の透明性をどう担保していくかということですが、昨今話題の綿の問題に端を発して、当社でも各取引先様、とくに大手商社様を中心に、そこからのさらに下の下請け様などに、基準を満たしているか否かという状況調査を行っています。そこで追える、追えない、トレーサビリティが取れるものと取れないものの種別を行い、取れないものについては代替素材、代替工場等を含めて振り替えていく動きをしていこうと、各ベンダー様と話しをさせていただいている最中です。透明性については、海外、国内問わず、人権問題があってはいけませんし、商品のトレーサビリティはすべて取っいきたいという方向性の下に進めているという状況です。

――“選択と集中”の部分で、上期では2020年3月期末に比べて店舗数が14%減少していて、下期も“選択と集中”を進めていくという話があったが、現時点で具体的にどういった計画があるのか。

松崎:先様、デベロッパーもあることなので詳細の詳細まではお伝えできないのですが、グループ全体を通して、コーエン社の店舗などについて下半期はより進めていこうと思っています。UA社の取り組みについても、非常に厳しいところがいくつか残っていますので、こういったところも見極めていきます。これはある程度、UA社についてはメドがついていますが、あと数店舗。主にはコーエン社について進めていく考えです。

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