米ニューヨーク発メード・イン・ジャパンのジュエリー「ミラモア(MILAMORE)」の新作は“点字”がモチーフだ。“金継ぎ”モチーフのジュエリーを打ち出し、世界中に日本の美意識を発信しているミラモアの稲木ジョージ最高経営責任者(CEO)兼ブランドビジョニアに新作ジュエリーやブランドに込める思いについて聞いた。
WWD:“点字”を新作ジュエリーのモチーフに採用した理由は?
稲木ジョージCEO(以下、稲木):既存の“パズル”コレクションに点字を使用していて、それから派生したのが新コレクションだ。大学生のとき、ひらがなでレタージュエリーを作ったりしていたけど、それが恥ずかしいと思った。ユニバーサルデザインとかバリアフリーについて学んで、触れることで読める点字はクールでポエティックだと思った。盲目の人のコミュニケーションツールをポジティブに変換できないかと思ったんだ。自分がインクルーシブな人間なので、“点字”をモチーフにしたのもそこからだ。
WWD:点字の意味するものは?このコレクションに込めた思いは?
稲木:これらの点字の意味は、有言実行の“マニフェスト”や自己愛の“セルフラブ”、そして“ビジョン”、感謝を表す“グラチチュード”や“ホープ”、愛を意味する“アモーレ”など。“マニフェスト”は私の座右の銘、また、ビジネスを成長させるには“ビジョン”が大切。ほかの言葉は、コロナ禍のロックダウン中に大切なことは何かを考えて思いついたものだ。もちろんカスタマイズすることも可能だ。点字は、ローズカットのダイヤモンドをアンティークジュエリーのセッティングで施していて星のように見える。インスタグラムで“点字”のリングをアップしたら、「盲目の父に見せたかった」というようなメッセージが送られてきた。一見、わからないけど、人の心に触れたり、「このモチーフは何か」というような会話のきっかけになるようなジュエリーであってほしいと思う。
WWD:“金継ぎ”という言葉が世界中で一般的に使われるようになったが?
稲木:“金継ぎ”は「ミラモア」のDNAだ。“金継ぎ”は日本特有の壊れたものを直した痕だが、なかなかその美しさを理解するのは難しい。それをジュエリーで表現することで、ジュエリー業界の千利休になりたいと思った。“金継ぎ”の意味や美しさが世界で理解されて大切にされるようになってうれしい。“金継ぎ”コレクションをアレンジした“インフィニティー”コレクションも新作として登場した。
WWD:今後の予定は?
稲木:来年にサングラスを発売する予定だ。メガネといえば日本の鯖江が有名だから、そこの職人と一緒に制作する。「ミラモア」はメード・イン・ジャパンのクオリティーで成熟できた。だから、同じ世代の職人を育成したり、日本の職人を世界に紹介していく活動もしていきたい。
WWD:「ミラモア」をどのように発展させていきたいか?
稲木:「ミラモア」は小さなブランド。アメリカでは、最近、ローカルビジネスをサポートする動きがある。そして、自分もそれを意識するようになった。例えば、大企業が運営するスーパーマーケットで買い物するのと家族経営のコーナーショップで同じ金額買い物するのでは、意味が違う。大企業にとっての1000円とコーナーショップにとっての1000円は、重みが違う。だから、私自身も小さなブランドが好きでサポートしたいと思うし、「ミラモア」が目指すのもニッチなラグジュアリーブランド。細部まで目が届くブランドでありたい。企業の規模=商品の価値とは思わない。それは、インスタグラムのフォロワー数も同じこと。「ミラモア」は宣伝や広告はせず、口コミで広がってきた。ジュエリーやファッション業界には夢があると思っているので、「ミラモア」をヘリテージブランドとして長年愛されるブランドに大切に育てていきたいと思う。