毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2021年11月8日号からの抜粋です)
三澤:販売員特集を過去5年担当してきましたが、彼らを取り巻く環境が抜本的に改善されたとは言い難いですね。それでも、販売員の地位向上のために近道はなく、そのためにも販売員特集を定点観測的に毎年実施することに意義があると感じています。
苫米地:とはいえ20年前に比べたら、福利厚生の改善や給料アップなど、少しずつ問題は改善されてきていますよ。でも、本当に少しずつなので、言い続けることが大事だと思います。
三澤:見守り、それを発信し続けることがわれわれメディアの役目ですね。
苫米地:そうですね。販売員の仕事ってこんなに奥深いんだ、こんなに面白い人がやっているんだということ、誰でもなれるけれど、実はクリエイティブな仕事で、日々勉強していかなくてはならない仕事だということを少しずつでも、業界内だけでなく消費者にも知ってもらいたいです。
三澤:販売員の仕事って、本当に多岐にわたります。商品知識はもちろん、着こなしなど、聞かれたらなんでも答えられなければならない。今回のある取材中、店内のディスプレーがちょっとくずれていたんです。でも、気が付くと整えられている。こんな気遣いがとてもうれしいんです。あくまで自然にアクションする。それってすごいことですよね。苫米地さんは、どうして販売員取材を続けているんですか?
苫米地:もともと、私自身が販売員だったんです。社会人1年目にインディーズブランドで働き始めたけど、接客について教えてくれる人はいなくて、ダメダメ販売員でした(苦笑)。その後、アパレル企画会社に転職してモノ作り、マーケティングなどに携わって、独立しました。かねて執筆していた「ファッション販売」から「販売員の取材をしませんか?」と声を掛けられたのがきっかけです。改めて、販売の仕事に向き合うと、「販売員って、こんなにすごいんだ!」と思うようになり、今に至ります。
三澤:1000人超を取材しても飽きない多様性があるということですね。
苫米地:はい。販売・接客の難しさやすごさに興味を持ってもらえるよう伝えるのが、私の仕事です。地道にやっていきましょう。