デジタル発表中心の2シーズンを経て、リアルイベントが本格再開した2022年春夏ファッション・ウイークは、喜びや希望を感じるポジティブなムードにあふれた。その大きな要因となったのは、欧米各国でワクチン接種とワクチンパスポートの活用が進み、夏ごろからウィズコロナの中でも“普通の生活”が戻ってきたこと。日常を再び手にするまで、1年以上厳しいロックダウン(都市封鎖)や制限された日々を過ごしたデザイナーたちのマインドは、いつになく開放的だ。そんな気持ちを元に生み出されたコレクションは、自由かつ大胆。もっと自分が着たいように服を着よう、個性をありのまま表現しようというメッセージを力強く発している。
その象徴となるデザイン要素は、二つある。一つ目は、ヘルシーでセンシュアルな肌見せだ。具体的に言えば、ミニスカートやショーツ、ブラトップといったアイテムから、カットアウトや深いスリット、オフショルダー、透け感のある素材使いまで。“露出度の高いスタイル”や“センシュアリティー”と聞くと、“男性の目を意識したもの”というイメージを抱く人もまだ多いかもしれない。しかし、今季のクリエイションから受け取るのは、前述したような自己表現のための着こなしを楽しむという感覚。インクルーシビティー(包括性)やボディーポジティビティー(ありのままの姿を受け入れ、愛すること)のムーブメントが広がる中で提案された幅広いデザインは、年齢や体型を問わず、それぞれにしっくりくる形で取り入れられるという点でも新しい。
この潮流を理解する上でカギとなるのは、新たな時代のスタートに際して“女性性”を再考し、既成概念や先入観から解放しようというムードだ。それを強く感じたのは、“削ぎ落とすことによって生み出す魅惑”をコンセプトにした「プラダ(PRADA)」。コルセットやトレーンなどの伝統的なイブニングドレスに見られる要素をミニマルに再解釈することで、現代女性のための“魅惑”を表現した。ミニスカートをボクシーなテーラードジャケットやレザージャケットと合わせることで、女性性を引き立たせると共に芯の強さを漂わせている。また、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」もテーマは“センシュアルな女性らしさ”。カットアウトによる肌見せや動きのあるディテールなど、いつもより軽やかでソフトなアプローチで、未来に向けて“セクシー”を再定義した。
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