ファッション

ジャパンサステナブルファッションアライアンス本格始動 28社が2050年「ファッションロスゼロ」宣言

 ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JAPAN SUSTAINABLE FASHION ALLIANCE 以下、JSFA) は12日、第1回総会を伊藤忠ガーデンで開催し活動方針を発表した。JSFAはサステナブルなファッション産業への移行を推進することを目的に今年8月に発足。ファッション・繊維企業が加盟し、11月12日時点で正会員13社、賛助会員15社、合計28社が参加している。パブリックパートナーは経済産業省、環境省、消費者庁。

 総会後には記者会見を開き、共同代表を務める伊藤忠商事、ゴールドウイン、日本環境設計の担当者が「サステナブルなファッション産業への移行の推進」と題した目標を発表した。「ファッション産業がサステナブルかと問われると大きな疑問があるのが事実。複雑で長いサプライチェーンや、消費者との関係が深く消費行動自体を変えないといけないといった特徴から1社ではなく社会全体でサステナビリティに取り組む必要がある」と高尾正樹・日本環境設計社長。会員目標数は設定しておらず伊藤忠商事の大室良麿繊維カンパニーファッションアパレル第3部長は「ファッション・アパレル事業に参加している企業には積極的に参加してほしい」と呼びかけた。小売りもアライアンスの対象となる。ゴールドウインの勝田悦弘経営企画本部CSR推進室マネージャーは「生活者を巻き込んでサステナブルファッションを推進してゆくことが大きなポイント。生活者の接点を持っている小売りやECは重要になる。参画していただき、連携を取りながら進めたい」と話した。

 JSFAの目標には大きく「ファッションロスゼロ」と「カーボンニュートラル」の2項目があり、それぞれ2050年目標と2030年目標を設定。これらを実現することで、日本社会全体で、①回収、循環システムの施行②不要となった衣料品を資源として生かすことが文化として定着③生活者によるサステナブルファッションに関連した選択・行動の拡大、の3点を目指す。

 企業がカーボンニュートラルを目指すにはまず、自社の二酸化炭素排出量の現状把握が必要だが、多くのファッション・繊維企業が何から手をつけていいのかもわからないのが現状だ。それらを「サポートする施策は予定しているか」という記者からの質問に対して、日本環境設計の高尾社長は「確かに特にスコープ3については計測が難しく、ファッション産業全体がどの程度排出しているのかという問いに我々も今は答えはない。が、課題は認識しており、排出量を調査しモニタリングする仕組みを探りたい」と答えた。

 また、目標にも掲げる環境に配慮した素材の採用や透明性の推進には、国際的な共通ルールに基づき運用されるツールや第3者の視点が必要になる。日本のアパレル産業はサステナビリティ・シフトが遅れたこともありヒグ・インデックス(HIGG INDEX)のような海外発のツールに頼らざるを得ないのが現状だ。「透明性をグローバルに発信するために日本独自のツール、認証開発の予定はあるか」という質問に対しては、「ヒグ・インデックスなどの国際的な指標に対して否定的な考え方は今のところ持っておらず、活用しつつ不足しているなら補う方法を考える。サプライチェーンはグローバルに広がっているから、国内のみならず全体を計測できる仕組みを検討したい」と展望を語った。

 「ファッションロスゼロ」実現には、再生繊維・衣料が欠かせない。そのビジョンを問われると伊藤忠商事の大室部長は「端材や回収した衣料をリサイクするイノベーションが不可欠だ。伊藤忠としても進めている分野だが、JSFAの中でも技術・イノベーションの情報共有をしながら可能性ある企業を拾い上げてスケールアップ仕組みを応援したい」と語った。

<会員企業> ※11月12日時点
正会員企業:アダストリア 、伊藤忠商事、倉敷紡績、ゴールドウイン、鈴木商会、帝人フロンティア、東レ、豊島、丸紅、日本環境設計、福助、ユナイテッドアローズ、YKK
賛助会員企業:アシックス、良品計画、cross Ds japan、清原、ハイケム、シキボウ、フジックス、日本繊維製品品質技術センター、カケンテストセンター、日本生活協同組合連合会、日華化学、旭化成アドバンス、コーベル、サルト、タカキュー

ジャパンサステナブルファッションアライアンスの目標

■2050年目標
【ファッションロスゼロ】

 原材料から最終処分までの全過程における単純焼却および埋め立て処分ゼロ

【カーボンニュートラル】
 原材料から最終処分までの全工程におけるCO2排出の削減と吸収による排出量実質ゼロ

■2030年目標
【ファッションロスゼロ】

●会員企業
・残在庫量や廃棄に関する実態把握による透明性の確保
・循環利用システムの構築
・次世代素材や新技術の活用(原料・生産・デザインの各段階での)環境配慮設計の積極的採用(カーボンニュートラル目標と連動)
・サステナブルファッションに関連した生活者との積極的なコミュニケーションカーボンニュートラル目標と連動)

●ファッション産業全体
・統一の基準を用いた各過程における単純焼却および埋め立て量の可視化
・単純焼却および埋め立て量の削減。次の3点における現状把握の調査を実施後、削減量の目標数値を策定予定。1.生産における原材料、生地、端材 2.企業の残在庫 3.家庭からの廃棄

【カーボンニュートラル】
●会員企業
・全過程における温室効果ガス(CO2換算)の把握と削減。目標数値を策定予定
●ファッション産業全体
統一の基準を用いた各過程における温室効果ガス(CO2換算)の可視化

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