世界最大の時計見本市だった「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」の迷走劇には、まだ続きがあった。
同見本市は2020年に事実上消滅。しかし同年7月に、主催者であるMCHグループ(MCH GROUP)が同見本市に代わる「アワー・ユニバース(HOUR UNIVERSE)」の開催を発表した。しかしコロナの拡大によって立ち消えとなり、そんな中で今度は「『アワー・ユニバース』をやめて、『バーゼル・ワールド』を復活する」と言い出した。今年8月には「バーゼル・ワールド2022」の開催を告知していたが、11月12日になって「新しいコンセプトの立ち上げに、いっそう時間が必要」と中止を決定した。
ことの発端は20年にさかのぼる。高額な出展料やラグジュアリービジネスの場にふさわしくないホスピタリティーへの不満から、“時計界の王様”である「ロレックス(ROLEX)」やLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の各ブランドなどが出展を見送り、同見本市は消滅。
しかし同年7月、「バーゼル・ワールド」を主催するMCHグループは、同見本市に代わる「アワー・ユニバース(HOUR UNIVERSE)」という新たなイベントを21年4月にスイス・バーゼルで開催すると発表した。
ところが、コロナの拡大によって「アワー・ユニバース」はフェードアウト。日本の時計関係者の間でも「そういえば『アワー・ユニバース』はどうなった?」とささやかれた同年6月、MCHグループが今度は「『アワー・ユニバース』をやめて、『バーゼル・ワールド』を復活する」と言い出した。8月には「22年3月31日から4月4日まで『バーゼル・ワールド2022』を開催する」と発表していたのだが、11月12日になって「新しいコンセプトの立ち上げに、いっそう時間が必要」と中止を決定した。
「バーゼル・ワールド」は、今年8月30日からジュネーブで「ブルガリ(BVLGARI)」が主催した時計見本市「ジュネーブ ウォッチ デイズ(GENEVA WATCH DAYS)」にポップアップの形で参加していたが、10の出展社の中にメジャーな時計ブランドの名前はなかった。「バーゼル・ワールド2022」の中止を告げるメッセージには、それらしい理由がいくつも並ぶが、結局参加ブランドを集められなかったのではないか。
MCHグループは同時に、18年から同見本市のマネジングディレクターを務める、文字通りのキーマン、ミシェル・ロリス・メリコフ(Michel Loris Melikoff)の退社も発表した。「バーゼル・ワールド」の迷走劇も、これにて閉幕か。