資生堂は、事業の中核部門である研究開発(R&D)の強みと独自性を可視化しイノベーション創出をさらに加速させる。“ダイナミック ハーモニー”を理念に掲げ、5つの研究アプローチを柱に世界中の研究員が能力を最大限に発揮しR&D部門の強化を目指す。
同社の研究開発は1916年に設立した「試験室」からスタート。西洋の科学と東洋の叡智を融合し、唯一無二の価値を生み出してきた。この独自のR&Dの考え方を再定義し、明文化することでベクトルを一本化。多様化する社会環境や消費者ニーズに対応した製品やサービスの源を生み出していく。
5つの研究アプローチは、1.肌の内外から美しさを引き出す「インサイド/アウトサイド」2.確かな効果を日本品質で届ける「ファンクショナリティー/ジャパンクオリティ」3.お客の感性を科学で追求する「サイエンス/クリエイティビィティー」4.プレミアム感と環境共生を両立する「プレミアム/サステナビリティ」5.広くお客を知り、一人一人に最適な美を提供する「インディビジュアル/ユニバーサル」。これら長年強みとしてきた研究領域を深化させ、市場の変化に合わせ研究アプローチを増やす。
近い将来、製品化につながるR&Dとして、紫外線が肌に好影響を与える変換技術や、皮膚の動きを再現した電子皮膚「4Dデジタルスキン」を活用したたるみ研究、ほうれい線にアプローチするセカンドスキン技術も発表した。
また、“ダイナミックハーモニー”の一環として外部との融合とも積極的に行う。脳科学者の中野信子氏と慶應義塾大学先端生命科学研究所所長の富田勝教授とアドバイザー契約を締結。富田教授とは、来年1月に富田研究室を設けR&Dの数名の研究員と共に未来型イノベーションを創出する。
1月からチーフブランドイノベーションオフィサーに就いた岡部義昭 資生堂常務は「マーケティング出身の自分がR&Dをリードし、研究員たちの役に立つことを考えた際、世の中の忙しない変化を理解していることが武器になると考えた。市場ニーズを体感したいと考える研究員も多いため、それを実現する体制作りも構築する。海外のR&D部門との連携も強め、横浜のグローバルイノベーションセンターに情報が集約できる体制作りも推進する。スキンケアカテゴリーを盤石化することが一番大事な核。そこから食品などのインナービューティカテゴリーにチャレンジする」とコメントした。
同社は2015年にR&D戦略を加速し、以降売上高の3%程度を研究開発費として投入している。