REPORT
ガリアーノのロマンチシズム×マルジェラのウイット、メンズも少し
これはマルジェラ?それともガリアーノ?そんな議論はそろそろ終わりにしてもいいだろう。フィナーレには相変わらず登場しないものの、今の「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」には、ジョン・ガリアーノのクリエーティブが端々まで行き渡っている。
ファーストルックは、5分丈の袖や丸い肩のラインがエレガントなピュアホワイトの“女優”コート。完璧そうに見えてどこか隙やヌケがあり、コケティッシュだ。遠目には毛足の短いファーのようにも見えるが素材はネオプレーンで、独特のボリューム感と軽やかさがある。襟に配したレオパートプリントもラフにカットすることで抜け感がプラスされている。そして、腕にひっかけて持つクラシックで大きなバッグは、長い間愛用したかのように少し“ヨレ”て愛嬌がある。このどこか憂いを秘めた“愛嬌”は、今の「メゾン マルジェラ」の魅力の一つだ。
続くセカンドルックが象徴するように、薄い生地で“覆う”ことで生まれるピュアでノスタルジックな世界観も特徴的。時間が経過してひび割れた鏡のようなミラー飾りのドレスはオーガンザで覆い、ポイントテッド・トーの靴はまるごとメッシュのタイツで覆う。
「マルジェラ」らしさは割れた鏡にみるビンテージ感に加え、“偶然”が生む遊び心に見られる。後半のメインであるガリアーノ得意の“ゲイシャ”ドレスは、“ペンキの上にうっかり座ってしまい、あわてて立ち上がった風”プリントが施されている。偶然や失敗をも楽しんでしまおうというウイットに富んだ姿勢は「マルジェラ」のスピリットのひとつだ。身体をしめつけないユルいキモノドレスのバックスタイルは帯の代わりにバッグを腰に当てたベルトで遊ぶ。
注目したいのは男性モデルが数人、ウィメンズと思われる服を着て登場したこと。先に発表されたデザインチームによるメンズコレクションとは別軸で、あえて胸をさらしているため、男性であるとわかるが、そうでなければ男女の区別はつきづらい。マッチョとは正反対のアンドロジナスなガリアーノ流メンズは、2016年春のメンズコレクションの序章なのだろうか?