モデルや女優として活躍する内田理央の普段着は、Tシャツやパーカなどカジュアルな装い。そこで本人の感性と個性を存分に生かしながら、ファッション性やプロセス、ビジネスにまでこだわった「本気のTシャツビジネス」をスタート!「WWDJAPAN」が各界の先駆者を紹介することでTシャツ、イラスト、ビジネスについて学びながら、「名前貸し」とは全然違う、本気のタレントによるアパレルブランドを目指します。第3回はyutoriの片石貴展社長に直撃します。
内田:これまでのキャリアを教えてください。
片石:新卒でモバイルゲーム事業などを手掛けるアカツキに入社して、インスタグラマーにサイトのPR依頼をする仕事をしていました。当時はファッションに注目しているアカウントがなく、音楽フェスや下北沢にいる若者が古着をよく着ているのを目にして、在籍中に副業でメディア「古着女子」を立ち上げました。
内田:学生時代にアパレルブランドを立ち上げたいという夢はなかったんですか?
片石:高校生の頃から古着が好きだったので、洋服屋はいつかやりたいと思っていました。でもファッション業界よりIT業界の方が自分自身を高めることができて、起業に近づけそうだと感じたので寄り道をしました。
内田:現在はD2Cブランドを手掛けられていますが、今後も店舗を持つ予定はないんですか?
片石:売り上げを増やすために店舗を出すのではなく、ブランドの世界観をより伝えるための出店を考えたいです。グローバルで顧客が増加した際に、観光地にお土産屋として店舗を出すケースはあると思います。でもチェーン店を多店舗展開して売り上げを増やすことは考えていないです。
内田:アパレルブランドを始める上で、SNSで重要なポイントは?
片石:SNSは仕事中も常に見るようにしていて、最近はTikTokを一番見ていますね。今、TikTokのメインユーザーが20代中盤から後半に変わり始めていて、インスタグラマーとティックトッカーの2万フォロワーでは熱量が全然違います。今年のマーケティングの予算は、インスタグラムからTikTokに全てシフトしました。周りが気付いてしまうから、あまり言いたくないんですけどね(笑)。自分が上の世代に勝っていることは若さだけなので、時代の空気感や話題のインフルエンサーに対しては誰よりも早くキャッチアップすることを意識しています。いい商品とそれに適したお客さまを招くマーケティングの両方ができていないと、物を売ってお金を稼ぎ続けるのは難しいです。
内田:単にバズればいいというわけでもないし、いい商品を作っても伝わらなければ意味がないということですね。D2Cブランドなどが普及して、ファッション界参入のハードルが低くなった今、上手くいく人とそうでない人の違いはなんですか?
片石:簡単に作れるものは作るんですが、服のクオリティーを上げたり、お金を稼いだり、本気でファッション業界で勝負をかけている人はいないですね。資金によって洋服のクオリティーも変わってくるので、規模が小さいと同じような物しか作れない。逆に大手は作れるものは沢山あるけど、現代風の見せ方や売り方が分からないからインターネットビジネスに弱い。両立できている会社やブランドはほとんどありません。