オンワードグループ傘下のインティメイツによる下着ブランド「シュット!インティメイツ(CHUT!INTIMATES以下、シュット)」は、2014年にルミネ新宿内に1号店をオープンし、現在全国に9店舗を構える。ファッショントレンドを反映したランジェリーを提案すると同時に、ボディーメイク機能で特許を取得したブランドを代表するブラジャーなど、下着における新しい価値観を提案してきた。多くの店舗が休業したコロナ禍でも売り上げは安定し着実に成長している。今年8月就任した鈴木淳也インティメイツ社長に話を聞いた。
――14年にオンワードグループが下着事業をスタートしたきっかけは?
鈴木淳也インティメイツ社長(以下、鈴木):オンワードグループはアパレルだけでなく生活文化企業であり、創業時から“人々の生活に潤いと彩りを提供すること”を経営理念に掲げている。それら商品の一環として、下着を展開することになった。
――「シュット」のコンセプトは?
鈴木:「ランジェリーもファッションのように楽しんでもらいたい」という願いを込めてスタートした。欧米に比べて日本の下着は機能性や実用性が重視される中で、下着もファッションのように楽しめる文化を作り、下着でもトレンドを発信したいと思った。“盛る”“痩せ見え”などの機能だけでなく、ファッションのように楽しめるランジェリーを提案したい。
――ブランド設立から8年目となるが、売り上げの推移は?
鈴木:コロナ禍でもECが店舗分の売り上げをカバーしてほぼ前年実績をキープできている。3〜4年前からECを強化してきたが、それがコロナの影響で、店舗とECの売り上げの割合が約6対4から約3対7になった。
コロナ禍2年目で売れるブラジャーに変化
――コロナで市場を取り巻く環境やニーズはどう変化したか?
鈴木:市場はもちろん厳しくなっている。下着もコトがなければ、購入が減る。それは、洋服と連動している。コロナ禍2年目でニーズに変化が見られる。昨年は、家ナカ需要により、ルームウエアやナイトブラが好調だった。特に、ナイトブラは前年の約2倍を売り上げた。“おうち時間”が増えたことによる、自分磨きへの意識の高まりからだろう。一方、“外出しないけれど下着はおしゃれをしたい”という消費者もあり、レース物を中心にデコラティブなデザインがよく動いた。今年は、Tシャツに合うようなシンプルなモールドカップブラが売れるようになった。昨年のノンワイヤーブラの売り上げは19年とほぼ同じだったのに対し、今年は前年比約20%増だ。リモートワークの定着により、外出着と部屋着にあまり差がなくなり、リラックスした外出着にもなるTシャツなどに対応したノンワイヤーブラの需要が高まっている。
――SNSを含めたプロモーション面での施策や成果は?
鈴木:ここ数年、アプリを軸としたサービスを強化している。専用アプリをリニューアルして使い勝手を良くした。19年にはショッピング用アプリとしての環境を整え、20年にはコンシェルジュサービスを導入してお客さまとスタッフが1対1でコミュニケーションできるようにした。SNSはインスタグラムが中心で、“おうち時間”に役立つサービスやマメ知識、情報などを積極的に発信している。顧客層は20代後半から40代前半が中心だが、あまり年齢は意識していない。今は、SNS発信を強化した結果、20代後半の顧客が増えている状況だ。
――コラボレーションを積極的に行っているが、その意図は?
鈴木:今年の春はクリス-ウェブ佳子さん、昨年の春と今年の夏にベイカー恵利沙さんとコラボレーションした。知名度の高い人の起用による宣伝目的というより、もともと「シュット」を使ってくれている人や下着に対するフィーリングが合う人々とコラボしている。ブランドとしてランジェリーを楽しむ文化を伝えていきたいので、年齢は関係なく、一緒にランジェリーシーンを盛り上げてくれる人々とコラボしていきたい。
女性下着初の“トリポーラス”を採用した素材を採用
――9月にサステナブル素材の商品を発売したが、その開発背景は?
鈴木:サステナブルな取り組みへの意識は以前からあり、ブランド設立初期からブラジャーの回収キャンペーンなどは行っていたが、商品開発はできていなかった。その理由は、肌触りが悪かったりと、品質面や価格の面でも納得するものに出合えなかったから。価格の高いサステナブルな素材を使用すれば、当然販売価格も高くなる。消費者にメリットがある付加価値のあるモノ作りをしたかった。リサーチを進めるうちに、ソニーグループが開発した“トリポーラス”に出合った。米の籾殻由来の素材で、レーヨンベースで柔らかく肌触りが良い。また、消臭機能や抗菌機能などもある。消臭機能から、今まではメンズウエアや靴下などに使用されていた。それらの機能は、サニタリーショーツに生かせると思い、女性下着業界で初の採用となった。ノンワイヤーブラが2型、ショーツはサニタリーを含む3型、メンズトランクス1型をラインアップしている。
――“トリポーラス”の初動は?
鈴木:ウイメンズ商品を購入する3人に1人がメンズトランクスを購入し、カップルランジェリーとして支持されている。私自身これまでボクサー派だったが、このトランクスを愛用している。肌触りがよく、トランクスの内側に立体的なインナーポケットが付いていて快適だ。サステナブル素材というよりも、肌触りのよさを気に入り購入する消費者が多い。Tシャツにも合わせやすいブラジャー需要にも合う。今後は定番化を実現し、アイテムの幅を広げたい。
――今後のビジネスの展望は?
鈴木:デジタルを中心としたサービスをさらに強化する。販売員がオンラインで接客するコンセルジュサービスと来店時の接客をアプリで共有し、その次の接客へとつなげる仕組みにしている。アプリをリニューアルして使いやすくしたことで、ロイヤルカスタマーが毎年2ケタ増だ。今後は、アプリを活用した接客やデジタルによるコミュニケーションをさらに進化させたい。