「WWDJAPAN」には美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事はWWDジャパン2021年11月29日号からの抜粋です)
一気に“収束”に傾いて見えてきたのが「アフターコロナがどうなるか?」。なにやら「すっかり元通りになりそう」な気配がする。はい、リモートワークはもう終わり、という企業も少なくないようで、マスクは外せなくとも、仕事にまつわる日常はコロナ前に戻るかの勢い。このままいくと、何事もなかったかのように意識まで元通りになりそうだが、それを残念に思う人は少なくない。日本では声高には言いにくい雰囲気があるが、ルールを重んじ、合理性を二の次にする社会ゆえに後退感は否めない。リモート万歳とはいわないが、先に進めばさらに新しい景色が見えてくるはずなのに、このチャンスを無にすれば、働き方改革などもう望めないだろう。それはビューティにもいえること。マスク対策でファンデや口紅を二次付着させないテクノロジーは明らかに進化し、巣ごもりがスペシャルケアや美容機器市場を活性化させ、ユニークな製品が一気に増えたのはひたすら喜ばしいが、でもそういうことではなく、とてももどかしく思うことがある。
これまで誰も経験したことのない2年の停滞期間、マスク必須も相まって対人関係にブランクがあり、自分としっかり向き合う時間が大幅に増えたはず。断捨離した人、今の仕事を見直した人、生き方を見直した人もいたのだろう。心が落ち着いた人もいれば心がざわついた人もいた。どちらにしても不安や心の揺らぎを、この間一番そばにいた化粧品に向けていた人は多い。人と化粧品の関係は明らかに変わったはずなのだ。紛れもなく距離が縮まったし、精神的な問題の解決を否応なしに化粧品に求めたりした。でも今後そんな新しい関係性に応えようとする化粧品はどれだけあるのか。
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