ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の早すぎる死を受けてファッション界が悲しみに包まれる中、業界人やデザイナーらは彼がどのように道を切り開き、若い才能を育て、次世代のデザイナーの新たな手本となったかなどについてコメントを寄せている。ヴァージルは29日、闘病の末にシカゴで亡くなった。自身のブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の創業者であり、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズ・アーティスティック・デザイナーだった。
ここでは米「WWD」に寄せられた、ヴァージルの功績を称え追悼する言葉を紹介する。
ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)
「ヴァージル・アブローの好奇心と情熱は、彼の人生やクリエイティビティー、夢に大きな影響を与えた。こんなに若く才能あふれる人物が突然亡くなってしまって本当にショックを受けている。彼が愛した妻、子どもたち、そしてご家族に心からお悔やみを申し上げる。アートが持つ、人々の人生を変えたり、次世代にインスピレーションを与えたりする力を信じていたヴァージル氏の思いを胸に、私たちみんながその遺志を引き継いでいければと思う」
マイケル・コース(Michael Kors)
「ヴァージルは、ファッションと文化の融合を現代的な文脈で行った、真の意味での“ルネサンス的教養人”だった。2009年に初めて彼のセレクトショップ、RSVPギャラリー(RSVP GALLERY)を訪れた時のことは今でも覚えている。その頃はまだヴァージルのことを知らなかったが、一瞬でその場のエネルギーや空間に心を掴まれた。彼のクリエイティビティーには境界線というものがなかった。ストリートウエアを新たな高みへと押し上げ、伝統的なラグジュアリーファッションを現代的に再解釈した。彼の才能は、ファッションデザイナーという枠に収まらないものだった」
オーロラ・ジェームズ(Aurora James)
「ブラザー ベリーズ(BROTHER VELLIES)」創業者兼「15パーセントプレッジ(15 Percent Pledge)」設立者
「ヴァージル・アブローは、クリエイティブの世界への贈り物のような存在だった。彼は私たちを引き込む明るい光であったと同時に、多くがその後ろに続いていけるよう道を照らしてくれた。彼が見せてくれた黒人として活躍する姿は業界を超越して、ブラックコミュニティーの若者たちのインスピレーションとして永遠に生き続けるだろう」
トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)
「ヴァージルは、手掛けるもの全てに前例のないビジョンをもたらした、クリエイティブの天才だった。ストリートウエアからラグジュアリーファッション、アート、音楽などをつないで新しい時代をけん引するイノベーターであり、壁を壊していく“破壊者”であった。中でも、彼がカルチャーに与えた影響は大きい。業界を跨いで自身のプラットフォームをコミュニティーのために生かし、次世代のクリエイターを育て、よりインクルーシブ(包括的)な環境を築いた。先駆者としてのレガシーや功績はこれからもずっと次世代のインスピレーションとなり、引き継がれていくだろう」
スティーブン・コルブ(Steven Kolb)
アメリカファッション協議会最高経営責任者(CEO)
「ヴァージルは前例のないインパクトをファッション業界に与えた。今後も彼のような人物はなかなか現れないだろう。革命的という言葉は使われすぎているが、彼は新たなアプローチでクリエイティビティーに挑戦した、本当の“革命児”だった。人生や仕事を意義深いものにするためには物事に情熱的に取り組み、伝統に縛られるべきではないと教えてくれた。彼はクリエイターであると同時に、多くのコラボレーションを行った。その関心はファッションにとどまることなく、デザインを多角的に捉えて文化をより豊かなものにしてくれた。ヴァージルは、アメリカ発祥のストリートウエアを自身の発信によって広め、初めてグローバルなファッション業界に浸透させた。彼はベテランたちも虜にしたが、その真の功績は次世代の若者たちを勇気づけ、後に続こうというモチベーションを与えたことだろう」
フィリップ・リム(Phillip Lim)
「私たちはカルチャー、ファッション、人類のいわば“守護神”を失ってしまった。彼が立ち上がって声を上げたことで、私たちには物事を変える力があるということを示した。自分の個性を大切にしつつ社会に貢献することは、彼を失ったわれわれが今一度学ぶべきこと。ヴァージルは多くの人々のために勇敢に道を切り開いてくれた。その想いを忘れない。友よ、安らかにお眠りください」
マシュー・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)
「ジバンシィ(GIVENCHY)」クリエイティブ・ディレクター
「ヴァージルは私にインスピレーションを与えてくれたし、多くの人にとってそうだったと思う。仕事へのコミットぶりは比類のないものだった。彼はこの業界の常識に果敢に挑み、これからのクリエイティブたちのために道を開いた。彼と出会ってたくさんの思い出を一緒に作れたことは本当に幸運だと思うし、もう会えないと思うと本当に寂しい。ヴァージルはこれからも、人々に与えた影響とその想いの中に生き続けるだろう」
ガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)
「敬愛する天才が亡くなったと聞いて衝撃を受けたし、とても悲しい。ご家族や彼と親しかった方々にお悔やみ申し上げます。アーティストとして多才かつ革命的な存在で、自分の道を自ら切り開いていった。ヴァージルの思いや作品は多くの人にインスピレーションを与えた。彼はこれからもずっとレジェンドであり続けるだろう」
ロニー・ファイグ(Ronnie Fieg)
「キス(KITH)」クリエイティブ・ディレクター兼CEO
「みんながより大きな夢を描けるよう、たくさんの扉を開いてくれた人。私が知っている中で最も聡明で優しい、ピュアな魂を持っている人物だった」
トレイシー・リース(Tracey Reese)
「ヴァージル・アブローは、才能と先見の明に恵まれていた。彼は(有色人種など多くの人々に)閉ざされていた扉を開き、ラグジュアリーファッションをもっとモダンで、身近なものにしてくれた。先駆者であることは苦労を伴うが、ヴァージルはそうした中でもみんなを一緒に引き上げ、誰もが“テーブル”につけるようにしてくれた。ひどく惜しまれることだろう」
トリー・バーチ(Tory Burch)
「ヴァージルは稀に見るクリエイティブの天才で、多くのことを成し遂げた。アメリカのストリートウエアを、グローバルレベルで通用するエキサイティングなものに発展させた。彼の優しく誠実な心、そしてこれから続く人のために道を切り開いていこうとする勇敢さは多くの人のインスピレーションとなったことだろう」
ダイアン・フォン・ファンステンバーグ(Diane von Furstenberg)
「本当に悲しいことだ。彼はまだ若かったが、大きな成功を収め、誠実でインスピレーションを与えてくれる人物だった。彼は本当に多くの人々のため、多くの事柄に立ち向かっていた。大きな影響を及ぼしていたし、これからさらにそうしていくはずだった。短すぎる人生の中でもこれほどのものをわれわれに残したのだから、レガシーを築いていくに違いなかった。責任感あふれる人物だった。病気を患っていたと知ってから振り返ってみると、彼の瞳はどこか悲しげに見える。ファッションは常に時代を反映するものだが、彼はまさに時代の寵児だった」
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ROYAL COLLEGE OF ART、RCA)
「われわれ一同、彼の訃報を聞いて大きな悲しみに包まれている。ヴァージル・アブローはRCAの大切な、素晴らしいアンバサダーだった。客員教授として同氏を迎えられたことを光栄に思う。クリエイティブにおける教育と機会の平等を実現するためにかけがえのない存在だった」
ベサン・ハーディソン(Bethann Hardison)
「ヴァージルは、18年に私が黒人デザイナーらと一丸になって活動を始めたときのインスピレーションの源だった。それが今では『デザイナーズハブ』(若手デザイナーを支援するオンラインサロン)に成長している。黒人として活動する中で、『黒人のデザイナーは何をしているの?』と何回も聞かれることに疲れていたので、私はいつも『誰もがヴァージル・アブローにはなれないけど、確かに存在している』と答えていた。ヴァージルはエンジニアリングとファッションを融合させて、新しい基準を作った。お悔やみ申し上げます」