ワコールホールディングス(HD)は12月3日、京都市内のホテルで2022年上期の振り返りと「ワコールGENKI計画2025(以下、元気計画)」発表した。安原弘展ワコールHD社長は、「欧米市場は新型コロナのリベンジ消費で回復したが、日本は“戸惑い消費”。12月に入ったがジングルベルが聞こえてこない状況だ」と語った。欧米市場は新型コロナに対する規制の緩和により、店舗売り上げがECを上回る状況になっているという。一方で、日本は10月以降、回復傾向にあるが欧米ほどの勢いはない。ワコールHDの2021年4〜9月期連結業績(米国会計基準)は、売上高が前年同期比19.5%増の874億円、営業利益が同211.6%増の39億円、純利益が同67.4%増の29億円だった。国内事業は7月以降の感染者数増加により苦戦したが、欧米の業績回復によりカバーした。
伊東知康ワコール社長は、「CX戦略、コスト構造改革、サステナビリティの推進が最成長の3本柱。CXはデジタル技術活用などにより、新規顧客獲得および既存顧客のロイヤルカスタマー化を目指すものだが、上期はコロナの影響で既存顧客の購買人数は増加したが新規顧客獲得に苦戦した」と話す。ECに関しては自社が前年同期比1%増、他社が同11%増と好調で、売り上げ構成比率は23%。コスト削減に関しては、人件費や諸経費の最適化、自主管理店舗への移行、ブランドや品番の集約により計画通りだった。「卸と直営店(百貨店、テナント店を含む)の20年3月期の割合は約8対2だったのを25年3月期には6対4にしたい」と伊東社長。サステナビリティに関しては、30年に向けた環境目標「自社排出量・製品破棄ゼロ、環境配慮型素材50%」を発表したばかりだ。
これらの戦略に新たに“健康経営”「元気計画」が加わった。これは、食事や運動、睡眠など社員の心身の健康を整えて生産性をアップして仕事へのエンゲージメントの向上を目指すもので、ワコールと健康保険組合、労働組合が三位一体となって戦略的に推進する。小川直子ワコール執行役員 人事総務本部 人事部長は、「ワコールの社員の9割が女性、消費者も女性が多いため、女性特有の健康課題への取り組みを強化していく」と語った。
25年度までの目標数値と活動計画を策定し、社員の“ウェルビーイング(心も体も社会的に満たされた状態)の実現”を目指す。ベースとなる心身の健康を整える項目に関してはKPIを設定済み。追って生産性やエンゲージメント向上の目標数値を定める。伊東社長は、「まずは、社員に健康でやる気になってほしい」とコメント。20年後の企業像に“ウェルネスのワコール”を掲げる同社ならではの取り組みだ。