「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズの新連載「考えたい言葉」は、2週間に1回、同期の若手2人がファッション&ビューティ業界で当たり前に使われている言葉について対話します。担当する2人は普段から“当たり前”について疑問を持ち、深く考え、先輩たちからはきっと「めんどうくさい」と思われているだろうな……とビビりつつも、それでも「メディアでは、より良い社会のための言葉を使っていきたい」と思考を続けます。第11弾は、【ハーフ】をテーマに語り合いました。「WWDJAPAN.com」では、2人が対話して見出した言葉の意味を、あくまで1つの考えとして紹介します。
ポッドキャスト配信者
ソーンマヤ:She/Her。入社2年目の翻訳担当。日本の高校を卒業後、オランダのライデン大学に進学して考古学を主専攻に、アムステルダム大学でジェンダー学を副専攻する。今ある社会のあり方を探求すべく勉強を開始したものの、「そもそもこれまで習ってきた歴史観は、どの視点から語られているものなのだろう?」と疑問を持ち、ジェンダー考古学をテーマに研究を進めた。「WWDJAPAN」では翻訳をメインに、メディアの力を通して物事を見る視点を増やせるような記事づくりに励む
佐立武士(さだち・たけし):He/Him。入社2年目、ソーシャルエディター。幼少期をアメリカ・コネチカット州で過ごし、その後は日本とアメリカの高校に通う。早稲田大学国際教養学部を卒業し、新卒でINFASパブリケーションズに入社。在学中はジェンダーとポストコロニアリズムに焦点を置き、ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院に留学。学業の傍ら、当事者としてLGBTQ+ウエブメディアでライターをしていた。現在は「WWDJAPAN」のソーシャルメディアとユース向けのコンテンツに注力する。ニックネームはディラン
若手2人が考える【ハーフ】
「ハーフ」に対するイメージは、メディア・レプリゼンテーション(メディアへの露出量、取り上げ方など)の影響が大きい。露出量だけでいうと、“ハーフタレント”や“ハーフモデル”は実際に日本で生活を営む人口に比べて、かなり多いと言える。しかしその容姿には西洋化された美の基準や白人至上主義の影響があり、それらの基準やイメージに当てはまらない人を指す“残念ハーフ”という言葉が存在してしまっている。
ほかにも、ファッション・ビューティ業界で「ハーフ」はたびたび製品名に使われている。カラーコンタクトの“ハーフ系”や、“ハーフ顔メイク”といった表現は日常的にSNSやオンラインサイトで目にする。広告では、着物店のポスターに「ハーフの子を産みたい方に」というコピーが使用された事例もある。このように「ハーフ」アイデンティティーのアクセサリー化と、偏った“ハーフ像”が世間に浸透している。
この流れを受け、近年は「ハーフ」という言葉の使用を避ける動きも出始めた。代わりに「ダブル(Double)」「ミックスド(Mixed)」「ミックスドレースド(Mixed race)」「バイレイシャル(Biracial)」「マルチレイシャル(Multiracial)」などが使われている。人種(レース)を基にした表現では、例えば東アジア人同士の「ハーフ」が含まれないといった声もある。家族のルーツや自身の居住経験など、複数の文化に触れて育った個人を、“第3の文化”を育む「サードカルチャーキッズ(Third Culture Kids)」と呼ぶこともある。
「ハーフ」「外国人風」という言葉が使われる背景には、“その場所になじんでいるかどうか”という見た目の影響が大きいことは間違いない。そういった容姿の「ハーフ」は、日常的に「ハーフなんですか?」「日本語上手ですね」と頻繁に言われる。会話の入り口として他者のルーツについて話すことも多いため、当人にとって毎日のように言われるうちに「自分は何者なのか」「この社会に属していると感じられない」という気持ちが芽生え、自信・自立心を喪失するアイデンティティー・クライシスへのきっかけになっているという理解は必要だ。
【ポッドキャスト】
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