ファッション
連載 マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」

サステナブルアクション、販売員はどうしたらいいの? マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」Vol.40

 こんな質問が寄せられた。おそらく20代であろうアパレル販売員さんからの真剣な質問だ。

 「私は大手アパレル企業の店舗スタッフです。周りはみんなサステナやエシカルライフを気にしているし、世の中的にもそうじゃないですか。私も私生活ではゴミを拾ったり、エコバックやマイボトルを持ったりしているけれど、会社のブランドはエコとか関係ないんです。だから商品をお客さまに勧めるのが心苦しくて。どうしたらいいですか?」。

 最初は「私のブランドに来たいのかな?」なんて思ってしまったが(笑)、そんな余裕は弊社にはないし、こんな小さな会社に飛び込むのは彼女にとってリスクが大きすぎて、おすすめできない(苦笑)。

 話を質問に戻すと、まず、こんな販売員さんがいることを企業は誇りに思わなくてはいけない。彼女は「売りたい!」とも思っているのだ。ただ”売れる商品”はあるが、”売りたい商品”がない。本当はおすすめしたくないのに接客しているのなら、お客さまはそのうち離れてしまうだろう。かといって、店舗スタッフが本社に企画をあげられたり、「こんな商品を作ってください!」なんてリクエストできたりのチャンスは多くないだろう。会社が大きくなればなるほど、その仕組みはまだまだ発展途上だ(もちろん、そうではない企業の取り組みもたくさん見てきたけれど)。

 それでは、彼女にできることは、転職以外に残されていないのか?

 私が彼女に提案したいのは「地球を守ろう!今日からできる!店舗でのサステナブル接客術」なるもの。それは笑ってしまうくらい簡単なものだ。サステナブル接客術というと、「商品背景を頭に叩き込み、トレーサビリティの重要性や生産背景を説明しても、お客さまの反応が悪くて楽しくない」という声が聞こえてくる。そこで、新しい知識や新しい商品の前に、当たり前のアクションを考えてみよう。

 明るく接客し、お客さまが商品を購入してくれたとき、あなたは当たり前のように洋服を袋に入れていないだろうか?そんな時に一言、「袋に入れますか?」と投げかけることはできないだろうか?この一言で、もしかしたらお客さまは、カバンに入っているエコバックを思い出すかもしれない。思い出すチャンスすら与えず自動的に商品を袋に詰めてしまう今までの当たり前に、一枚の袋さえ無駄にしないためのサステナブル接客術を実践するチャンスが眠っている。ポイントは、嫌みたらしくお伺いしないこと。でも言葉のトーンや接客術は、腕のいい販売員ならお得意なはずだ。

 窓が少ない百貨店では雨が降ると、販売員だけがわかる音楽に変わる。その知らせを合図に販売員は、一斉に紙袋の上にビニールをかけ始める。今までの時代だと接客業として立派すぎるくらいの対応だが、時代は変わった。百貨店には欲しい人にだけ継続して基本廃止して欲しいが、そんな提案は販売員からは難しい。でも、「あ、外、雨降ってきちゃったみたいですね、お客さま傘とか持ってます?風邪ひかないように、暖かくしておかえりくださいね」「おかえりは駅ですか?店舗内何番出口が一番近くて濡れない帰り道ですよ」なんていう心遣いから、「ビニールかけます?」は忘れず、お客さまに判断を委ねることはできないだろうか?

 そんな時「あ!大丈夫です!」なんて言われたら、「エコスコアを一点」と思い、心の中で「よっしゃー!今日も一枚の袋が無駄に捨てられるのを防いだそー!」ってそっと叫んでください。無駄な袋が使われなくなれば、会社としても節約になるので、経営者も嬉しいのではないだろうか?まさにwin-winだ。

 他にもたくさん、店舗でできることはあるだろう。

 路面店の入り口に置いた植木鉢に水やりをしている若い販売員の前を通りかかったことがある。気になって話しかけたら、そのお店は靴屋さん。そしてその植木鉢は、お客さまが「いらない」と言って靴だけ持ち帰ったから残されたシューボックスだった。「苗を植えてみたんです」って。どうやって水が滲みないようにしているかは謎だったけれど、そのもったいない精神が面白くて、まんまと私は店の中まで入って時間を過ごした。

 今日から実践と一歩踏み出す勇気がアパレル業界にたくさん広がり、最後はお客さまにしっかり持ち帰っていただける道筋ができたら嬉しい。

 何事も、まずはできる範囲から。

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