REPORT
25周年 解体と再び構築、ユーティリティーで見せるロックンロール・サーカス
会場は、19世紀に創業したサーカスの専門劇場。サーカスを見るかのように四角い舞台を囲むように客席は配置された。ザ・ローリング・ストーンズの音楽に乗って舞台に登場したのは、ピエロメイクが施されたモデルたちで、ピエロ襟を付けてポーズを取りながら軽快に舞台を歩いていく。
冒頭は、コンパクトなテーラードスーツをベースしたスタイル。ジャケットは前身頃しかなかったり、袖を切り離してアクセサリーにしていたり。解体し、再構築したスタイルだ。ショーを通じてポイントになるのがユーティリティーの要素。特にバックパックが鍵で、城の形をしたものやナポレオンジャケットのディテールを用いたものなど、ユニークなデザインから、その要素をウエアにも落とし込んだものまでさまざまだ。バックパックと一体化したテーラードジャケットやライダースジャケット、ナポレオンジャケットやトレントコートなどバリエーションも多い。
ショー中盤の主役はトランプモチーフ。ハート、スペード、ダイヤ、クローバー。その中にザ・ローリング・ストーンズの若かりし頃の写真がプリントされ、シャツドレスやスカート、パンツなどにのせられた。トランプのキングをプリントしたジャケットもある。ハートモチーフは、デコレートしてアップリケしたり、チェック柄のスーツ地にさりげなく用いたりとさまざまな形で登場する。終盤は、パーツをパズルのように再構築したミリタリースタイルでショーの幕を下ろした。
インスピレーション源は1960年代の英国のバンド。そのなかでも、プリントやショーの音楽で用いたザ・ローリング・ストーンズが手掛けた映像作品「ロックンロール・サーカス」がアイデアの鍵になった。
ショー終了後、バックステージで「アグレッシブで元気になるようなコレクションにしたかった」と高橋盾が語るように、ブランドの代名詞の一つ“ダークファンタジー”の世界は控え目に、今回は25周年にふさわしいポジティブムード溢れるコレクションを披露した。
ブランド25周年を迎え、10日からは東京オペラシティアートギャラリーで展覧会「ラビリンス・オブ・アンダーカバー」の開催を控えている。「ノンストップですよ。むしろこれからですよ」。回顧展は通過点にしかすぎない、と言わんばかりに、気持ちを内に秘め飄々と語った姿が印象的だった。