「ピーク(PEAQ)」は、現代人に寄り添った4つの習慣(趣味、睡眠、瞑想、セックス)をテーマにしたCBD入りアロマブランドだ。同ブランドは、LGBTQ向けのカルチャーメディア「ジェンクシー(GENXY)」と、CBDメーカーのドロームによる共同プロジェクトから誕生した。2021年春に公式サイトを含むオンラインのみで販売を開始し、初月から1000万円の売り上げを達成するなど好調に推移している。
CBDとは、植物の麻に含まれる成分カンナビノイドの一つであるカンナビジオールを指す。大麻草に含まれる中毒性の高い成分・THC(テトラヒドロカンナビノール)を取り除いたCBDは日本において合法であり、覚醒作用はない。バームなどのスキンケア製品に加えて、オイルやタブレットタイプなどの経口タイプ、さらにペット用のアイテムに至るまで、目にする機会が増えたCBD。「ピーク」は、CBDを水蒸気にしてから体内に取り込む“吸うCBD(吸引式)”アイテムで、無農薬で栽培された麻を使用している。好きなアロマを本体にセットし、1日に10〜20回を目安にゆっくり吸引することで、手軽にリラックスタイムを楽しむことができる。
目を引くのはポップなパッケージデザインと、CBD初心者もセレクトしやすいシーン別・4種のアロマ(味)だ。趣味や一人時間をポジティブに楽しむひとときに取り入れたい“バカンス”、上質な睡眠のための“スリープ”、強いストレスを感じた時やヨガ、瞑想時などに深いリラクゼーションへと導く“エスケープ”、不安や緊張、あらゆる社会的な縛りから解放されポジティブなセックスライフをサポートする“プレジャー”をラインアップする。
ディレクターを務めるのは、LGBTQ向けウエブメディア「ジェンクシー」の編集長でもある上地牧人氏。パッケージのイラストも自身が担当している。上地氏に「ピーク」開発の経緯や今後の課題に加えて、マイノリティーのメンタスヘルスという社会的観点から見るCBDについて話を聞いた。
WWD:CBDに着目したきっかけは?
上地牧人「ピーク」ディレクター(以下、上地):メディアに携わり、国内外の情報を見聞きする中で、数年前から米国のゲイコミュニティーの中でCBDが人気だと知った。個人的な興味から使い始めると、心が落ち着いたり、頭がすっきりしたりすることを体感した。生活にCBDを取り入れることはセルフケアにつながると考え、商品開発をスタートしたが、当時(2年前)は、国産のCBD商品がほとんど無かったため「であれば自社で!」と開発を始めた。
WWD:LGBTQコミュニティーにCBDが人気といえるのはなぜか?
上地:LGBTQ含めたマイノリティーはメンタルヘルスに不調を感じやすい。国内においては、同性婚などの法制度が整っておらず、90%以上の当事者がクローゼット(自身がLGBTQであることを公開していない)の状態だ。そのため、会社や友人、親族からの孤独感や疎外感を感じやすいといわれている。自殺率はマジョリティーの数倍という統計もある。心と体のバランスを保つことが難しい今の社会にあって、心身のバランスを整えてくれる作用持つCBDはピッタリな成分だと考えている。元々はマイノリティー向けにスタートしたブランドだが、コロナ禍になり、メンタルヘルスはマイノリティーだけの問題ではなく社会全体の課題となった。ストレスでバランスを崩す人が急増する中、CBDはセルフケアの一つとして効果的だと感じている。
WWD:日本でCBD製品を販売する難しさや課題は?
上地:「ピーク」は、CBD製品の開発を行うメーカーとコラボ制作したこともあり、開発自体のハードルはそこまで高くはなかった。ただ、販売する上での難しさは多々ある。事業者目線では、「決済の制限」「ネット広告の制限」という点が挙げられる。「ピーク」は、オンライン主体の販売(D2C形式)だが、クレジットカードといった主要な決済は、CBDに対する審査が厳しく、申請から1年経ってようやくカード決済が使えるようになったほど。また、主要なネット広告(Google、Twitter、Instagramなど)もCBD製品は出稿できない状態だ。オンライン販売をメインとしている者としては、非常に厳しい制限を感じている。
お客さま向けで難しいのは“CBDの体感”だ。CBDの体感は個人差が大きいため、期待をもってCBDを試したはいいものの、「あまり効かずにがっかりした」という声もある。体にはCBDをキャッチする受容体というものが存在しているが、受容体が反応する前に使用を辞めてしまう人も多い。CBDは2週間〜1カ月程度使うことで、じわじわと受容体が反応していくため、継続利用も重要だ。ファッション、ビューティ業界ではだいぶ浸透してきたとはいえ、一般的にはCBDはまだまだ認知度が低く、分かりづらい成分だからこそ、正しい知識を広めていきたい。