ファッションECの検索プラットフォーム、リスト(LYST)は2021年を振り返り、ファッション業界で最も影響力のあったデザイナーを発表した。同サイトでは、オンラインショッピングの動向やトレンドの検索ワードを中心に消費者の関心を調査している。ここでは、その中でも米「WWD」が注目する若手にフォーカス。これからの活躍が期待されるブランドを紹介する。
「2021年にブレイクした若手ブランド」
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「ネンシ ドジョカ」2022年春夏コレクションのプレビューから FRANCISCO GOMEZ DE VILLABOA / WWD ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
「ネンシ ドジョカ」
2021年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」受賞者のネンシ・ドジョカ(Nensi Dojaka)による黒のミニドレスは、月平均7000の検索数を記録し、21年第1四半期の「最も話題を集めたアイテム」にもランクイン。クラシックなリトル・ブラック・ドレス(LBT)をシアー素材やスリットで現代的かつセンシュアルに再解釈したアイテムは、パーティームードの復活を体現しており、「2021年にブレイクした若手ブランド」1位に選ばれた。
「クリストファー ジョン ロジャーズ」2022年春夏コレクションから ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
「クリストファー ジョン ロジャーズ」
レディー・ガガ(LADY GAGA)やベラ・ハディッド(Bella Hadid)らのお気に入りブランドとして注目を集めたのは、「クリストファー ジョン ロジャーズ(CHRISTOPHER JOHN ROGERS)」。新生「ゴシップ・ガール(GOSSIP GIRL)」の衣装にも使われたことやアメリカの小売店「ターゲット(TARGET)」とのコラボも人気を後押しし、ニューヨーク(NY)で夢を追うデザイナーから一躍メインストリームなファッションの世界で知られる存在に。
「アイアムジーア」の公式ウェブサイトから
「アイアムジーア」
「アイアムジーア(I.AM.GIA)」はソーシャルメディアを活用し、“Y2Kファッション”(現在再燃している2000年前後のファッション)や、ティックトックで“バズる”デザインを取り入れたスタイルを提案。人気なのは、骨盤が見えるようデザインされたローライズのパンツ。同アイテムの検索数は年初と比べて164%増加した。
「ハリス リード」のドレスを着用して「アースショットプライズ」授賞式に参加したエマ・エトソン ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
「ハリス リード」
「グッチ(GUCCI)」のインスタストーリーに登場して話題を集めたハリス・リード(Harris Reed)は、ジェンダー・フルイド(流動的)なアプローチを得意とする若手デザイナー。ハリー・スタイルズ(Harry Styles)の衣装を担当したことで一躍注目の人になり、21年第1四半期中にはデザイナー名とブランド名の検索数が189%増加した。
「マクシミリアン」2022年春夏コレクションから ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
「マクシミリアン」
「マクシミリアン(MAXIMILIAN)」は、パンデミック最中の20年に設立されたブランドだ。21年英国アカデミー賞(BAFTA)で、女優のミカエラ・コール(Michaela Coel)が着用したことにより、同月には検索数が49%アップ。モデルのナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)やリアーナ(Rihanna)、エイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)らもクライアントに抱える。
「ジ・アティコ」のゼブラ柄のビキニ ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
「ジ・アティコ」
ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)やデュア・リパ(Dua Lipa)が着用したことでカルト的な人気を集めたのは、イタリアブランドの「ジ・アティコ」。リパが楽曲「Love Again」のミュージックビデオで着用したゼブラ柄のビキニは、動画公開後にページビュー数が224%増加し、21年第2四半期の「最も話題を集めたアイテム」のラインアップに入った。
「クリストファー エスバー」2022年リゾート・コレクションのバックステージから。オーストラリア・ファッション・ウイークのアフターパーティーで撮影 ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
「クリストファー エスバー」
オーストラリア人デザイナー、クリストファー・エスバー(Christpher Esber)による「クリストファー エスバー」は、10年に創業。ドレスライクなスタイルが、21年のドレスアップ需要の高まりにマッチして、検索数は前年比54%増加した。
「ストーリーエムエフジー」の公式ウェブサイトから
「ストーリー MFG.」
イギリスを拠点とする「ストーリーエムエフジー(STORY MFG.)」は、サステナビリティへの取り組みやスローファッションの実現に注力。オーガニック素材や自然由来の染料を使ったジェンダーレスなアイテムを提供する。2月に「リーボック(REEBOK)」とのコラボレーションによるクルエルティーフリー(動物を傷つけない)のスニーカーを発売すると、21年第1四半期の間に検索数が123%アップ。
「ヘブン バイ マーク ジェイコブス」 ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
「ヘブン バイ マーク ジェイコブス」
Z世代の消費者へのアプローチを試みる「マークジェイコブス(MARC JACOBS)」の新ライン、「ヘブン バイ マーク ジェイコブス(HEAVEN BY MARC JACOBS)」は、20年9月にスタートした。どこか懐かしいアイテムを揃え、「ドクターマーチン(DR. MARTENS)」や「カクタスプラントフリーマーケット(CACTUS PLANT FLEA MARKET)」などとのコラボアイテムも発表。オリビア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)やベラ・ハディッド、ヴィーガン(Vegyn)といった若手セレブから支持を集めている。
「スキムズ」 ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
「スキムズ」
キム・カーダシアン(Kim Kardashian)による矯正下着ブランド「スキムズ(SKIMS)」。東京オリンピックのアメリカ代表女性選手のために、アンダーウエアやラウンジウエアを手がけ、世界中からの関心を集めた。21年には、「フェンディ(FENDI)」ともコラボしている。
「ブリジャートン家」シーズン1から ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
21年にブレイクしたブランドの背景には、SNSインフルエンサーよりもセレブリティーのパフォーマンス中や日常生活での着用が大きな影響を与えている。「リスト」のデータによると、デジタルでもリアルでも、ブランドやデザイナーの人気はセレブリティーなどの文化的な影響力を持つ人物に左右されることが多いという。そのため、21年はランウエイで披露されるファッションよりも、ネットフリックス(NETFLIX)シリーズがトレンドをけん引していたようにも見える。
人気時代ドラマ「ブリジャートン家(Bridgerton)」のファッションにまつわる投稿やコメントなどの言及は、年間を通して10万5000件を超えた。1970〜80年代にかけて一世を風靡した故・ホルストン・フローイック(Halston Frowick)氏のデザイナー人生を描いたオリジナルドラマ「ホルストン(HALSTON)」は、ドラマ配信開始後にブランドの検索数が550%上昇。同じく、21年にシーズン3が公開された人気シリーズ「セックス・エデュケーション(SEX EDUCATION)」では、作中で着用されていたスタジャンやフレアジーンズの検索数が配信開始後1週間で、それぞれ93%と50%増加した。
ミュージックビデオも同様の効果をもたらし、21年8月にカニエ・ウエスト(Kanye West)が新作アルバム「Donda」をリリースした後、彼が手がけるブランド「イージー(YEEZY) 」への関心は128%上昇した。ほかにも、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)やドジャ・キャット(Doja Cat)、オリビア・ロドリゴ、ブラックピンク(BLACKPINK)のリサ(LISA)らは、ラインストーンのトップスからラテックスパンツやプラットフォームブーツまで、多くのアイテムのオンライン需要を高め、21年最大のトレンドセッターとなった。
「マッハ&マッハ」の“シンデレラシューズ” ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
そして2022年は、ベラ&ジジ・ハディッド姉妹(Bella & Gigi Hadid)もファンだというパリ発ブランド「コペルニ(COPERNI) 」をはじめ、ロンドンを拠点とするアップサイクルブランド「コナー アイヴス(CONNER IVES)」、NY発の「エリア(AREA) 」、七色に輝く“シンデレラシューズ”が人気の「マッハ&マッハ(MACH&MACH)」などが、マーケットでの支持を集めそうだ。