ついに2021年も最終週。ファッション界のサステナブル思考や抱える問題は、巷でもよく目に、耳にするようになった1年だった。来たる22年もサステナブルなアクションはさらに加速して欲しいと願っているが、作り手として業界を見つめていると正直「もう少しかかりそうだな」とも感じている。
19~20年には、さまざまなサステナブル素材をベンチャー企業や繊維会社が発表した。夢のある繊維や色素、テクノロジーに心躍る素材の数々。蜘蛛の糸から繊維が!?「エルメス(HERMES)」がキノコレザーを!?ペットボトルからTシャツが!?リサイクルフェルトに土に還る生分解性素材?!
だが21年は、それらを巧みに操りデザインとコストパフォーマンスに落とし込むことへの難しさに直面している。例えばせっかく生分解性の土に還る素材で洋服を使っているのに、そこに普通のファスナーが縫い付けられているのだ。つまるところ組み立てる側に未だ「why(なぜ、サステナブルに取り組むのか?)」という概念が育っていない。
サステナブルな未来を目指す時代、我々が社会人として忘れてはいけない最初の一歩は、この「why」だ。そしてこれは、サステナブルな社会にとって大切なだけでなく、全てにおいて小さな存在が大きく成長するとき、必ず大切なマインドではないだろうか?
「ゴールデンサークル」というビジネス構図・理論はご存知だろうか?簡単に説明すると、「商品を売るためにどうする?」ではなく、アイデンティティを持ち「なぜその商品が、世に出回る価値があるのか?」を売りにすることが長く持続的に愛され、ファンを増やし続けるコツという理論だ。今サステナブルな社会を組み立てる際に最も必要な考えが抜けているから、上述の事態がおこり、コストを理由に諦めてしまう人や企業が多いように感じている。ほとんどのデザイナーは、素材を作ることができない。そこで紡績会社がサステナブルではない農家や工場に赴いて気づき新しい開発をしたり、若いベンチャー企業が「このままではやばい!」と考え作り上げたりして新しい素材が生まれている。こうした素材は、「ゴールデンサークル」でいうところの「why」の部分を担っている。だから洋服を組み立てる側も「why」の精神を持たないと、前段階で作られた新しい未来への切符をゴミ同様にしてしまうのだ。
私を含めデザイナーは組み立てる側として、トライ・アンド・エラーを繰り返して前にすすむしかない。ただそのスピードは、情報をどんどんシェアして加速できればと思う。食の世界では、すでに“共存”の世界が広がっている。ファストフードからオーガニック食材までの選択肢が共存している。ファッションはどうか?まさしく15年ほど前に世界的大ブームとなったファストファッションは、誰でも安くていいものが買える・着られる時代を作ったが、環境負荷や雇用問題を浮き彫りした。そこからエシカルファッションが生まれたが、まだ食のような”共存”には至っていない。果たして25年の大阪万博という大舞台が開かれるまでに世界の、日本のサステナブル・ファッションはどこまで進化できるだろうか?その頃には少なくとも”共存”という形が取られていることを切に願いながら、22年も地道な努力を続けようと思っている。