デンマーク発インテリア「カール・ハンセン&サン(CARL HANSEN & SON以下、カール・ハンセン)」がコロナ禍で売り上げを伸ばしている。「カール・ハンセン」といえば、巨匠ハンス・J・ウェグナー(Hans J Wegner)による名作椅子”CH24“=“Yチェア“で知られている。「ビームス(BEAMS)」や「アクタス(ACTUS)」のスタッフの自宅を紹介する本の中で、最も多く登場している椅子と言っても過言ではない。コロナ禍に行った“Yチェア”のキャンペーン価格販売が大ヒット。「カール・ハンセン」を扱う某ディーラーは、「ウェグナーの名作椅子が10万円以下で購入できるというのは大きな魅力だ。キャンペーンの価格戦略も大好評だった」と話す。“おうち時間”が追い風で成長するカール・ハンセン ジャパンのネイサン・ベックウィス(Nathan Beckwith)社長に話を聞いた。
WWD:コロナになってからの商況は?
ネイサン・ベックウィス=カール・ハンセン ジャパン社長(以下、ベックウィス):2018年以降の3年間で売り上げが1.5倍になった。予算比で20年は116%、21年は120%と年々売り上げを伸ばしている。
WWD:売り上げ好調の理由は?
ベックウィス:“Yチェア“のキャンペーン施策がヒットした。マットな塗装仕上げ仕様の新作”ソフト“を20年に税込7万円というキャンペーン価格で販売したところ、1年間で8000脚以上を販売。全国のディーラーでも大成功し、新客獲得につながった。2週間で納品できる体制を取ったのも奏功した。このキャンペーンが非常に好評だったため、“ソフト”がコレクション入りを果たし、8万300円で販売している。22年には、他のラインアップの価格改定を予定しており、8万4700円で販売予定だ。キャンペーン対象だった”ソフト”も好評だが、依然としてナチュラルな“Yチェア”も売れている。
WWD:“Yチェア“はメード・イン・デンマークの一生ものということで人気が高いが?
ベックウィス:アウトドア家具はアジアで生産しているが、それ以外は、サステナビリティにこだわりデンマークで生産している。“Yチェア“は釘を用いておらず、木材とペーパーコードだけで構成されている。ペーパーコードの座面は、使用頻度や座り心地の好みによるが平均で10年、長い場合は25〜30年は使用可能だ。日本でもペーパーコードの張り替えをはじめとする修理やメンテナンスの体制を整えている。だから、“Yチェア”は一生もの、また、代々使える椅子だと言える。
WWD:国内の直営店数とディーラー数は?
ベックウィス:東京と大阪の直営店と約130のディーラーがある。自社ECでも販売している。
WWD:中心顧客の年齢層は?売れ筋は?
ベックウィス:以前は45~60代の顧客が多かったが、20~40代の若い層も取り込めるようになった。コロナにより自宅の生活を見直す消費者が増えてより幅広い層が購入していく。コロナになって一辺110cmの3〜4人用のダイニングテーブルが好調だ。2つの“Yチェア”とテーブルを購入しても30万円程度。コンテンポラリーなライフスタイルを好む若いカップルなどが購入していく。コロナ禍で外食を控えるようになると自宅に友人を招く機会が増える。そのため自宅に投資する人が増えている。
WWD:今後の戦略は?
ベックウィス:さまざまなチャネルを使ってブランドの価値や認知度アップを図りたい。また、在庫キープにより着実に売り上げを伸ばしていく。サステナビリティも大きな柱だ。カール・ハンセンはクラフツマンシップにフォーカスした垂直統合型のビジネスをしている。FSC認定の素材を使用し、再生エネルギーを使用して生産。地元のコミュニティーに雇用の機会を与えると同時に再生エネルギーを供給している。