ビジネス

世界最大級のデジタル卸プラットフォーム「ジョア」を日本のブランド・小売店が支持する理由

 米国発のデジタル卸プラットフォーム「ジョア(JOOR)」が存在感を強めている。2010年に創業した「ジョア」は、「世界最大規模のB to Bマーケットプレイス」を標榜し、現在ファッション関連を中心に53カテゴリー、1万3200のブランドをユーザーとして抱え、直近12カ月の流通総額(卸売ベース)は約2兆円に到達した。日本では、19年から伊藤忠商事が独占的な戦略パートナーとして本格始動。海外の大手ラグジュアリーブランドから国内の雑貨メーカーまで取り扱いジャンルも幅広く、累計流通総額(卸ベース)は約2700億円に上った。多くのブランド、小売店は、なぜ「ジョア」を信頼するのか?

150カ国、
約37万5000の小売店にリーチ

 「ジョア」の強みはシステムの開発力だ。ブランドと小売り間のデータ連携といった業務効率化はもちろん、トレンド分析やレコメンド機能なども搭載する。米百貨店ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)や仏百貨店プランタン(PRINTEMPS)、パリの個店メルシー(MERCI)、ECのショップボップ(SHOPBOP)などの有力ショップは、自社の基幹システムと「ジョア」を連携させて、受発注や在庫管理、売れ行き傾向の把握などをよりスムーズに行っている。

 また、注目したいのが「ジョア」がSNSのような要素を持ち合わせている点だ。小売り側には現在、150カ国に約37万5000の小売店がおり、本格展開して2年で既に日本国内でも2万4000以上の店が既にユーザーになっている。ブランド側もバイヤー側も「ジョア」上で新しいクライアントを探すことができるため、日本のブランドに、海外の小売店から「買いたい」と突然連絡が来る事例も多い。決済機能もあるので、初めての取引先で万が一、売掛金が回収できないというリスクを防げるのも魅力だ。

 使用料はブランド側のみが課金する仕組みで、ミニマムプラン(社内4人のユーザーが使用する場合)で年間9999ドル(約115万円)。ユーザーが増えるごとに使用料も増す。小売店側は無料で使用できるが、基幹システムの連携には別途経費がかかる。

 今回は、既に「ジョア」を導入している日本のファッション関連企業3社から声を集めた。オリジナルブランドで海外卸を進めるビームス(BEAMS)、社内での受注の取りまとめに「ジョア」を活用しているバッグ専門店の「サックスバー(SAC’S BAR)」、メンズブランド「エフシーイー(F/CE.)」を手掛けると共に、ショップ「ノルディスク キャンプ サプライ ストア(NORDISK CAMP SUPPLY STORE)」も運営し、ブランド側とバイヤー側の両方で「ジョア」を使用しているOPEN YOUR EYESの担当者が、それぞれ「ジョア」導入の決め手や使用した感想を語った。

まるでiPhoneのような
スピード感でアップデート
されていく(ビームス)

 まず登場するのは、ビームスで「ビームス プラス(BEAMS PLUS)」「ビームス ボーイ(BEAMS BOY)」「ピルグリム サーフ+サプライ (PILGRIM SURF + SUPPLY)」などの海外卸を担う担当者。「海外での受発注に対応したサービスであること、ラインシートの作成時間を削減できることの2点を重視し、“『ジョア』一択”で導入に至った。ラインシート作成の効率化は期待以上だった。これまでは2〜3週間、終電ギリギリまで作業していたが、導入後には3分の1ほどになり、浮いた時間を他の業務に充てることができた」。

 「2019年にパリで展示会を実施して、“これから”というタイミングでコロナが拡大し、リアル展示会を行えない状況となった。デジタル上でのやりとりで、オーダー数に影響が出ないか不安だったが、ズームアップ機能で柄や素材などのディテールもよく分かるとバイヤーからは好評だ。想像以上に世界各地の小売店からのコンタクトが多く、海外卸のオーダー数はむしろ右肩上がりとなった。新規の取引先とは直接会えない不安もあるが、支払いはデポジットにしたので、不安も解消できた」。

 「システムの反映の速さにも驚いている。まるでiPhoneのようにどんどんアップデートされていく。新機能についても『ジョア』のカスタマーサクセスチームがサポートしてくれるので安心だ。『ジョア』のシステムにこちら側がアジャストする必要もなく、自分たちに合わせた使い方ができるのも非常に魅力に感じている。今後は、海外バイヤーからの新規オファーに対して、『ジョア』上で相手の情報を網羅できるようになるとより便利になるだろう」と、口々に語る。

6人体制で2日間かかっていた
集計が一瞬で終了
(サックスバー)

 バッグ専門店の「サックスバー」の担当者からは、以下のようなコメントが出た。「当社は、全国630店舗の各店長がそれぞれの裁量で、展示会で気に入った商品を発注する仕組みになっている。コロナ以前は年に2回、東京で展示会を開催しており、そこに全国から各店長が足を運んでいた。当初、『ジョア』はブランドの卸向けのサービスの印象が強かったが、当社のような小売りにとっても便利なツールだと感じた。コロナ禍で、移動が困難でもオンラインでオーダーを全国から集められる。さらに、これまで6人体制で丸2日もかかっていた集計業務がオンライン上で、一瞬で終わるようになった。それまで紙ベースで発注を受けて、一枚ずつ集計していたときには考えられないほど、効率化できている」。

 「『ジョア』は慣れればECで買い物する感覚に近いが、まだ各店長からの操作方法についての問い合わせが多いのは事実だ。社内用の説明書を作成するときには、カスタマーサクセスチームがアドバイスをくれ、店舗からの直接の質問や相談にも対応いただいている」。

 「気に入っている機能は、オーダーの進捗状況が可視化できる機能。展示会の最中にどんな商品にオーダーが入っているか一目で分かり、意外な人気商品も途中経過の時点で分かる。逆に動きの鈍い商品に対しては、個別に営業をかけられるし、紙の受注体制ではできなかったことができるようになった」。

国内外のブランドと
バイヤーのニーズを
盛り込んだ「ジョア」には
今後も更に期待ができる
(エフシーイー)

 OPEN YOUR EYESでは、自社ブランド「エフシーイー」の卸のために「ジョア」を導入している。「2020年5月に『ジョア』を導入したが、それまでは自社開発のシステムを使っていた。創意工夫して作ったシステムだったが、不便な面が多かったり、オンラインじゃないと使えなかったりして、不便な面があった。海外では『ジョア』を利用している小売店が多く、われわれのブランドは海外比重も大きいことが導入の決め手になった。『ジョア』はオフラインでも使用できる。展示会の会場は必ずしも通信環境が良いとは限らないので、非常に便利だ。ラインシートや受注をPDF化できる機能も重宝している。国内の展示会では、紙資料を渡すことがまだ多いので、すぐにラインシートを紙で出力できるのは助かる」と、同社の山根敏史代表。

 OPEN YOUR EYESは、渋谷、京都、世田谷などでショップを展開する「ノルディスクキャンプ サプライ ストア」で、買い付けのためにも「ジョア」を使用している。同社はブランド側としてだけでなく、バイヤー側の目線でも「ジョア」を見ているというわけだ。高橋真バイヤーは、「『ジョア』では過去のオーダー履歴をさかのぼって見ることができ、バイヤーとして非常に助かっている。今後は、ブランド側で推しているアイテムがどれかといったことが分かるようにしてほしい。展示会では数多くのブランドの商品を目にするため、『ジョア』上でそれがまとまっていると、後から見返したときに助かる。今は『ジョア』で買い付けしているブランドもあれば、独自のフォーマットで買い付けしているブランドもあるので、それらが『ジョア』で統一できたりすると更に便利になると思う」と話す。

問い合わせ先
ジョア(JOOR)
050-1743-2610