年始の風物詩である箱根駅伝が2〜3日に開催された。“歴代最強”とも言われる青山学院大学が大会新記録を打ち立て、2年ぶり6度目の総合優勝を果たした。
選手の走りと並んで注目されるのが、足元を支えるシューズだ。前回大会では「ナイキ(NIKE)」着用者が全体の95%を占める201人だったが、今回は出場210人のうち、「ナイキ」着用者が154人、「アディダス(ADIDAS)」が28人、「アシックス(ASICS)」が24人、「ミズノ(MIZUNO)」が2人、「ニューバランス(NEW BALANCE)」「プーマ(PUMA)」が各1人と、他社も追い上げた。
中でも、大きく巻き返したのが「アシックス」だ。前回大会での着用者ゼロから、今年は早稲田大学や帝京大学などを中心に支持を伸ばした。
浮上を誓い社長直轄のプロジェクト発足
「アシックス」は箱根駅伝の定番シューズとして長年支持され、2017年には着用率トップを誇っていた。しかし、「ナイキ」がカーボンプレート内蔵の“厚底シューズ”を開発した18年以来、存在感が徐々に薄まり、昨年ついにレースから姿を消した。
“再び頂点に”を誓った同社は、エリートランナー向けのシューズ開発プロジェクトを発足。廣田康人アシックス社長の直轄プロジェクトとして、迅速な意思決定のもとに商品開発を行った。
“アスリートに寄り添うシューズ”
プロジェクトメンバーは商品開発にあたり、膨大なアスリートの走行データを検証した。そして「速く走ろうとする動作は人によって異なる。ここに、ソリューションのヒントがあるのでは」と考えたのが、同プロジェクトを率いる竹村周平部長だ。足と地面との間に距離がある厚底シューズはコントロールが難しく、シューズに合わせた走り方が求められるとも言われる。そこで、選手の走行スタイルに合わせて好みのモデルを選べる“メタスピード(METASPEED)”シリーズを考案した。「スピードとともに歩幅が広がるストライド走法と、歩数を増やすピッチ走法の2つのスタイルに大別し、それぞれかかとの厚みや傾斜を変えた。加えて、推進力を持ちながら、安定した接地感覚も備える。アスリートがシューズに合わせるのではなく、シューズがアスリートのスタイルに寄り添う。これが、箱根での支持拡大につながったのでは」と竹村部長は振り返る。
区間賞続出のニューイヤー駅伝
箱根駅伝は、全10区のうち8区の区間賞受賞者が「ナイキ」で、残りは「ミズノ」「アディダス」だった。しかし、元旦に開催された、実業団が参加するニューイヤー駅伝では、 “エース区間”と呼ばれる4区をはじめ、5つの区間で“メタスピード”着用者が区間新記録を打ち立て、記録でも存在感も見せつけた。着用率は前回大会の1.6%から15%まで上昇した。
「アシックスの復活を印象づけられた」と竹村部長は手応えを感じており、「現在、マラソンシューズだけでなく、長距離レーシングスパイクも開発中。発表を楽しみにしてほしい」と続けた。