「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズの連載「考えたい言葉」は、2週間に1回、同期の若手2人がファッション&ビューティ業界で当たり前に使われている言葉について対話します。担当する2人は普段から“当たり前”について疑問を持ち、深く考え、先輩たちからはきっと「めんどうくさい」と思われているだろうな……とビビりつつも、それでも「メディアでは、より良い社会のための言葉を使っていきたい」と思考を続けます。第13弾は、【男らしさ】をテーマに語り合いました。「WWDJAPAN.com」では、2人が対話して見出した言葉の意味を、あくまで1つの考えとして紹介します。
ポッドキャスト配信者
佐立武士(さだち・たけし):He/Him。入社2年目、ソーシャルエディター。幼少期をアメリカ・コネチカット州で過ごし、その後は日本とアメリカの高校に通う。早稲田大学国際教養学部を卒業し、新卒でINFASパブリケーションズに入社。在学中はジェンダーとポストコロニアリズムに焦点を置き、ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院に留学。学業の傍ら、当事者としてLGBTQ+ウエブメディアでライターをしていた。現在は「WWDJAPAN」のソーシャルメディアとユース向けのコンテンツに注力する。ニックネームはディラン
ソーンマヤ:She/Her。入社2年目の翻訳担当。日本の高校を卒業後、オランダのライデン大学に進学して考古学を主専攻に、アムステルダム大学でジェンダー学を副専攻する。今ある社会のあり方を探求すべく勉強を開始したものの、「そもそもこれまで習ってきた歴史観は、どの視点から語られているものなのだろう?」と疑問を持ち、ジェンダー考古学をテーマに研究を進めた。「WWDJAPAN」では翻訳をメインに、メディアの力を通して物事を見る視点を増やせるような記事づくりに励む
若手2人が考える【男らしさ】
時代や文化によってさまざまな「男らしさ」の定義が存在するが、“強さ”や”細かいことを気にしないこと”“競争的、支配的であること”などが伝統的ないわゆる“男らしさ”の特徴と言える。「男はこうであるべき」という社会からのプレッシャーは、ファッションやビューティを自由に楽しむことを縛るだけでなく、男性のメンタルヘルスにも大きく影響する。また、ミソジニー(女性蔑視)やホモフォビア(同性愛嫌悪)に繋がることもある。このように男性自身や社会にネガティブな影響のある行動規範を“有害な男らしさ”と呼ぶ。
“有害な男らしさ”は、思わぬところにも影響しおり、その1つは環境問題への関心の差とされる。エシカルでサステナブルな生活への取り組みをする男性が女性より少ないことを表す、“エコ・ジェンダー・ギャップ(eco gender gap)”という言葉をイギリスのマーケット調査会社ミンテル(Mintel)が提唱した。細かいことを気にする、何かをケアすることが女性的であったり、家庭的生活の管理が女性の仕事というイメージが原因だったりという研究を英メディア「ガーディアン(THE GUARDIAN)」などが報じている。
「グッチ(GUCCI)」のアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)は、このようなネガティブな男性のステレオタイプからの解放と“男らしさ“の再考・再定義を、2020-21年秋冬メンズ・コレクションのテーマにした。子ども服にインスパイアされたデザインなどが特徴で、“男らしさ”をフェミニンさで打ち消した“ジェンダーレス”ではない、常識を刷り込まれる前の“ピュア”な子ども時代に戻ろうという意図だ。これは、“男らしさ”が生まれつき自然なものではなく、周りから教わったり、大人を真似したりして身につけているものだというメッセージも込められている。
近年はより多様な「男らしさ」を楽しもうという動きがビューティ業界で顕著で、男性をターゲットにしたブランドも増えた。製品が“男性向け”であることをアピールすることは、逆にジェンダーの区別がついてしまうという考えもあるが、ビューティが従来女性中心だったからこそ、明記することで男性も手に取りやすい効果がある。多くのメンズ向けブランドは黒のパッケージで“男らしさ“の表現が固定化されていたが、最近ではカラフルで個性的なパッケージが特徴の「ボッチャン(BOTCHAN)」などが登場している。
【ポッドキャスト】
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