「お客さまの価格に対する要求は厳しい。極力値上げは避けたいが、商品によっては避けられない局面にある」。素材高、物流コストの上昇、円安などを背景に、ファーストリテイリングの岡崎健取締役は、13日に行われた2021年9〜11月期決算会見で値上げについて言及した。「下期(3〜8月)は何品番かは値上げをしなければいけないが、あくまで限定的だ。今秋冬物から価値と価格のバランスの見直しを商品全般で進めており、価格を上げても受け入れていただけるものだけに(値上げは)限る」と強調した。
同社は14、15年に2年連続で値上げを行った結果、客数減を受けて16年に再値下げした経緯がある。直近では21年4月からの消費税総額表示切り替えに合わせ、実質的に約9%の値下げを行っていた。
9〜11月期連結業績(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前年同期比1.2%増の6273億円、営業利益が同5.6%増の1194億円、純利益が同33.0%増の935億円だった。稼ぎ頭である国内やグレーターチャイナのユニクロ事業が苦戦。それでも、東南アジアやオセアニア、北米、欧州のユニクロ事業が大幅な増収増益となり、全体を押し上げた。「まだ途上ではあるが、収益の柱の多様化が進んだことに手応えを感じている」と岡崎取締役。
国内ユニクロ事業は、高気温や前年業績のハードルの高さなどを背景に、売上収益が同10.8%減の2264億円、営業利益が同18.8%減の487億円だった。ただし、「期初の想定よりは上回っている」。右肩上がりが続いてきたグレーターチャイナは、減収・大幅減益というこれまでにない「特殊な状況」だ。「コロナ禍による市場全般の盛り下がりが最大の要因。中国の地元ブランドへの支持が急伸していることで、ユニクロへのニーズが減っているわけではない」と見る。
【齊藤孝浩ディマンドワークス代表はこう見る】
値上げをすると客数が減るというのは、ユニクロのような低価格帯マーケットの宿命だ。値上げすれば必ず売上数量が減るので、判断は慎重になる。それでも値上げをする際は、恐らくユニクロに一番期待されている価格である1990円の商品の分量を維持しつつ、それ以上やそれ以下の価格帯の商品の分量を調整することになる。「付加価値を高めて価格を上げる」と口で言うのは簡単だ。付加価値向上のために具体的にどんな手法が考えられるかというと、たとえ価格が従来のユニクロプライスより高めでも、他社が高額で販売している商品を驚くような価格で販売することだ。まずは素材軸。ユニクロで言えば、カシミヤ製品などはまさにその手法でヒットした。もう一つがコラボやクリエイター起用などのデザイン軸だ。「+J」に代表されるような、「これなら通常のユニクロ価格より高くても買いたい」と思わせる商品を企画することが必要になる。
※齊藤孝浩/大手総合商社アパレル部門に勤め10年目に退職。米国のベンチャー企業で1年勤務し、年商100億円規模のカジュアルチェーンへ。2004年にディマンドワークス設立。著書に「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)