チャオ!ミラノ3日目は最高気温11度の超快晴。本日の3つのショー会場は徒歩15分圏内で、スケジュールもスムーズに進みそう。本日の目玉は、本番直前にチケットを獲得した「プラダ(PRADA)」のリアルショーです。ゲスト数は昨日の「フェンディ」よりも倍以上となる約300名でした。収容人数は、室内の面積ではなく体積で規定があるらしく、「プラダ」の会場は巨大倉庫のように天井がとても高いため、多くの座席を用意できたようです。政府が定めた規定で一つ謎なのは、屋外でのイベントが許されていないこと。まあ考えても変わらないことは深く追及せず、今日も元気に取材へと行ってきます!
10:00「マリアーノ」
ミラノ3日目のスタートは、1995年生まれのイタリア人デザイナー、ルカ・マリアーノ(Luca Magliano)が手掛ける「マリアーノ」です。2018年に「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」で新人デザイナー賞「Who’s on next !」を受賞した、イタリア若手の注目株です。奇抜なモチーフ使いでミステリアスな雰囲気の一方で、テーラリング技術を生かして洋服を丁寧に作っているというイメージがあり、今季のミラノで楽しみにしていたショーの一つでした。
会場はバーで、招待状は紙ナプキンでした。ダンスフロアにはベッドが置かれ、私の座席があったのは奥の部屋のバースペースでした。キャンドルの灯りだけの中、コレクションのクオリティが高くて心を撃ち抜かれました!ブランドの武器であるテーラードはセットアップで制作し、ばらしてスタイリングされています。例えば、スーツ生地のビッグシルエットのジャケットはゆるいストレートジーンズに合わせ、ボトムスはミリタリージャケットとコーディネートしています。ほかにもコーデュロイやピンク色のツイードのセットアップなどが、スエットやニットウエア、バイカージャケットと自由に合わせてバラバラで登場し、コレクション全体を上手にまとめていました。全体的にゆったりとしたシルエットで、だぼつかせたボトムスの裾、まくりあげたジャケットの袖口、2つ巻いたベルトの片方を閉めずに垂らすといった、細部の粋なスタイリングも見事です。クラシックなスタイルを現代的に崩す絶妙さは、26歳の彼だからこそなせる技で、今の若い世代のリアルな日常着を投影していました。それでいて崩しすぎていないので、上の世代が敬遠するような、いきすぎた奇抜さでもありません。
暗くてルックが見えにくかったとはいえ、ムーディーな音楽と演出でブランドの世界観は十分伝わってきました。バーテンダーの2人が約10分のショーの間ずっとディープキスし続けていて、朝イチから艶っぽい演出にドキドキさせられました!
12:00「エトロ」
「エトロ(ETRO)」の招待状はいつも凝っているので、受け取るのが楽しみなんです。今季は、ドイツの哲学者アルトゥル・ショーペンハウアー(Arthur Schopenhauer)の著書「女について」でした。私は昨年末に彼の主著「意志と表象としての世界」を読了したばかりだったので、この偶然には驚きました!イタリア語版が届いたので読めませんでしたが、着想源は「女ついて」の作品自体ではなく、知識と感情を求めて文学を探求する、旅路に似たその過程にあるようです。ショー会場には、学びの場であるボッコーニ大学の校内を選びました。
「エトロ」のシグネチャーであるペイズリー柄は、ベルベットの艶やかなガウン以外ではほとんど見られませんでした。代わりにグラフィカルなオオカミとバラ、雪の結晶のモチーフをニットウエアやシャツにあしらい、コレクションが華やぎます。コーデュロイやフリース、サテン生地のソフトな質感のボトムスは、ワイドシルエットでリラックスムードを引き立てました。終盤には同じようなルックの3人のモデルが一気に登場し、ニットウエアに記された文字をつないで読むと“Raison d’Etro”となります。フランス語で“生き甲斐”を意味する”raison d'etre”をブランド名とかけているのだと想像できました。その後、イタリア語で“喜び”を意味する”GIOIA”の文字も続きました。
「エトロ」は昨年、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)系の投資会社、Lキャタルトン(L CATTERTON)に株式の60%を売却し、新たな最高経営責任者(CEO)を迎え入れました。新章へとページをめくった今、新たなモチーフとシェイプを取り入れて、ブランドにとっての大きな変化を楽しんでいるように見受けられます。喜びとポジティブなエネルギーに満ちたブランドの原点はそのままに、「エトロ」の物語りは時代と共にこれからも続いていきそうです。
14:00「プラダ」
「プラダ」はラフ・シモンズ(Raf Simons)加入後初となる、メンズのショーを開催しました。招待状として届いたのは、コットン100%のパジャマセットアップ。メンズのLサイズで152cmの私には大きいですが、シャツはデイリーにも着られそうデザインだし、記念に残るので嬉しい!そして今回ミラノにパジャマを持ってくるの忘れたので、実際にパジャマとして早速愛用しております。「プラダ」のパジャマを着て寝られる日が来るなんてと、感慨深いです。
ショー会場のプラダ財団の中は、オリーブグリーンの絨毯と壁、ベルベットの椅子が並べられており、映画館を模した会場装飾。ランウエイの扉が開くと、宇宙船へと続きそうなトンネルの出口から俳優のカイル・マクラクラン(Kyle MacLachlan)がファーストルックとして登場しました。BGMはテクノポップ、ヒューマン・リーグ(The Human League)の“Morale… You’ve Lost That Loving Feeling”で始まり、“The Black Hit of Space”“Being Boiled”の3曲です。
角ばったショルダーラインのコートやジャケット、フォーファーを肘や裾にあしらったビッグサイズのコートといったアウターは、権力を誇示するような力強いアティチュードをまとっています。ラフ加入後のコレクションに登場したMA-1はボリュームが増し、ウエストを締め付けるデザインを加えてアップグレードさせ、ハイテク素材のオーバーオール、セカンドスキンのニットウエアが登場すると、過去数シーズン含めて長編映画を観ているようでした。直線的なラインとワイドなボトムスといったシルエットの変化により、今季は着る人に“力”を与えています。ユニホームやワークウエアといった男性服の象徴を、さらに男性らしく表現したのでしょう。ダイバーシティの流れでファッションにおける性差や社会的格差が崩れつつある今、男性に威厳を取り戻させ、異なる職業を称えているようにも見えました。ウィメンズの2021年春夏コレクションは“官能性”がテーマだったので、メンズでは現代における“男性性”を探求した背景があるようです。
ショー当日の朝、「プラダ」のインスタグラムに投稿されたティザーに登場した、ジェフ・ゴールドブラム(Jeff Goldblum)が最後のルックを飾ってショーは閉幕。ほかにもネットフリックス(NETFLIX)のドラマ「セックス・エデュケーション(SEX EDUCATION)」にオーティス役で出演しているエイサ・バターフィールド(Asa Butterfield)や、トーマス・ブロディ=サングスター(Thomas Brodie-Sangster)、ルイ・パートリッジ(Louis Partridge)、ダムソン・イドリス(Damson Idris)など若手俳優もランウエイを歩きました。ショー後にSNS上では、ウィレム・デフォー(Willem Dafoe)やエイドリアン・ブロディ(Adrien Brody)といった俳優が登場した「プラダ」2012-13年秋冬メンズ・コレクションと重ね合わせて大きな話題になりました。このコレクションのテーマは“権力と威厳”で、今季は10年越しの続編だったようです。過去のルックを確認すると、蝶ネクタイやシャツ、そして体を寄せ合って座るゲストたち。当然マスクは着用しておらず、その光景を懐かしく感じました。
20:00「ジェイ ダブリュー アンダーソン」
前季までパリ・メンズのスケジュールに参加していた「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」は、今季がミラノデビューです。残念ながら、直前にデジタルの発表に変更したため、彼を実際にミラノで見られる機会は6月に延期となりました。たった数日前にロンドンで撮影したであろう映像は、ナイトクラブの階段を下りて、地下のダンスフロアへと入っていくシンプルな演出。総スパンコールのポロシャツとショーツのコンボ、メタリックの全身タイツ、奇妙に波打つヘムライン、蛍光カラーで明るいエネルギーに満ちています。ナイトクラブの参加証として利用されるリストバンドを結集させたようなトップスと、カラフルな輪をつなぎ合わせたニットウエアは、同ブランドらしいコンテンポラリーアートの表現で、“団結”というワードが浮かび上がってきました。このコレクションをリアルなショーで見られない現実こそ、何より“奇妙”なのですが。きっともう少しの我慢だと信じて……。
「本日のジェラート」
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「プラダ」のショー後、15時のおやつとしてジェラートにありつけました!ミラノ在住の友人にオススメしてもらったテラ(Terra)に初来店です。ティラミスとリコッタチーズという、なんともイタリアらしいフレーバーを頂きました。すっごく濃厚な味と、なめらかな舌触りが気に入ったのでテラはリポート決定です。リコッタチーズの方にはチョコチップが入っていて、チーズとチョコの出会いは嬉しい発見で、昨日食べられなかった分喜びもひとしおでした〜。