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大丸心斎橋で現代アート展 コロナで高まる「美術需要」

 大丸心斎橋店は、現代アート作品約300点を展示即売するイベント「ART SHINSAIBASHI」を15日に開幕した。昨年、試験的に実施したところ好評だったことから、今回は規模を拡大した。隣接する心斎橋パルコ14階の「スペース14」をメイン会場に、大丸心斎橋本館1階・御堂筋側イベントスペース、本館8階・アールグロリューの3会場で展示する。期間は22日まで。

コシノヒロコも画家として出品

 出品作品は「ディオール」「ユニクロ」とのコラボでも有名なKAWSをはじめ、バンクシー、ジャン=ミシェル・バスキア、草間彌生、村上隆といった現代アート界の巨匠や人気アーティストの作品から美大を卒業したばかりの気鋭の若手作家の作品まで。さらに、手塚治虫やスタジオジブリなどアニメの希少なオリジナルセル画もお目見えする。

 2021年に兵庫県立美術館で「コシノヒロコ展」を開催し、画家の顔も持つファッションデザイナー、コシノヒロコ氏の作品も見どころの一つ。自身のブランドのテキスタイルデザインを思わせるカラフルな作品と、対照的な水墨調の作品を約25点出品した。14日には外商顧客を対象としたトークショーを開催。祖父の影響で3歳から絵を描き始めて85歳になる今日までアートワークを続けてきたいきさつと、アートの価値と向き合い方などについて話した。

 「絵は私にとってインテリアの一部なので額縁まで含めてデザインしている。アートは生活を豊かにするし、自分で環境を作り出すおもしろさがある。ファッションデザインの原点もアートにある」。さらに作品を購入する際のアドバイスとして「アートは生きるうえで力になるもので、精神の根底にあるものを引き出してくれる。特にアフターコロナの時代にはアートが必要になってくるので、ますます要求が強まると思う。資産価値を見て購入する人を否定しないが、アートのコレクションは所有者の生き方や人間性などを映し出す鑑。自分を表現する手立ての一つとして購入するのもおすすめ。ただし、責任をもって選ぶ感性を持たないと購入する資格はないと思う。固定観念にとらわれず、アートと向かい合うことが大事で、アートと共に成長していく関係であるべき」と力説した。

作品は10万円から8800万円まで

 現代アート市場で“完売作家”の異名をとり、作品が入手困難なアーティスト、杉田陽平氏は、会期中、ライブペインティングを行った。完成作品を含めて6点を抽選販売する。杉田氏は、恋愛リアリティ番組「バチェラージャパン」への出演を機に知名度が高まり、SNSやブログでも発信。絵の具の皮をコラージュしたり、歯科技工士の使う溶剤で立体成型したり、画材の特徴を生かした意表をつく作品を制作している。

 今後の活躍が期待される若手作家では、日本画の技術を活かし、色鮮やかなカメレオンを点描画で描く樋口新氏や、日常の身近なものからヒントを得た温かみのある色彩で描かれた作品が人気の多田知史氏らの作品が並ぶ。

 作品の価格帯は10万円~8800万円。近年増えている20代後半~40代の若年富裕層を中心ターゲットに、従来からのシニア層やファミリー層の集客も狙う。

 現代アート市場の現状について、同店美術担当バイヤーの阪東広文氏はこう語る。

 「コロナ禍の中でアートマーケットが非常に活況を呈しており、12月の美術売り場の売り上げは前年の2倍になった。現代アートが伸びており、これまではついで買いの商材だったが、今は売り上げの半分を超える。外商客だけでなく一般客にとってもアートが身近になりつつあることを実感している」

 アートは従来、ステイタスシンボルや資産性を期待して購入されることが多かった。しかし、近年はコロナ禍の影響もあり、インテリアやファッションの一環として楽しみ、対話と共感から購入につながる傾向にある。SNSで発信する作家も多く、双方向でコミュニケーションがとれて特別な体験を提供してくれる存在になりつつあるという。

 「今回、心斎橋店で開催する催事として独自性を出すために、心斎橋とのかかわりが強い大阪出身のコシノヒロコさんに打診して快く受けていただいた。百貨店としては、連結しているパルコとの相乗効果で次世代顧客の育成にもつなげていきたい」と阪東氏。

 顧客の利便性を高めるため、デジタルを駆使した取り組みも強化。専用のECサイトを開設したほか、インスタグラムの公式アカウントで杉田氏のライブペインティングを配信した。

 次回は今年6月の開催を予定している。

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