「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS以下、オム プリュス)」は、2022-23年秋冬コレクションを東京・南青山の本社で発表した。今シーズンもパリ・メンズ・ファッション・ウイークには参加せず、約50人を招待してミニショーを行った。
遊牧民に着想した新しいテーラード
シーズンテーマは、遊牧民を意味する“nomad(ノマド)”。ノマドが朝起きて、手元にあった洋服を深く考えずコーディネートしたような、脱力感のあるテーラードスタイルだ。ジャケットとコートに合わせるのは、首元が大きくドレープしたトップスや光沢あるワンピース、ブランケットをまとったようなトップス、温かみのあるフェルトのインナー、ワイドショーツなど。コーデュロイを使ったストライプや、目の荒いツイードの上にステッチで描いたチェック、ヒョウと花のモチーフを融合したような総柄など、パターンも豊富で、赤やオレンジ、ピンク、イエロー、水色とカラーパレットも快活だ。一方で、乱暴なカットアウトなどのディテールも多く、脱力感と脱構築のアイデンティティが共存する。前立てのふぞろいなカッティングやあえて作ったシワ、裾からはみ出した長い裏地、腰回りを強調する生地の切り替え、身頃に施した水滴のように鈍くきらめく装飾などは、「オム プリュス」そのものだ。
複数のコラボシューズも披露した。レザーのダブルストラップサンダルとオックスフォードシューズは、イギリス人シューズデザイナー、ジョン・ムーア(John Moore)のデザインを受け継ぎ、「ジョージコックス(GEORGE COX)」が手掛けているモデルだ。今回はコラボ仕様として、厚底にアレンジした。定番になりつつある「ナイキ(NIKE)」とのコラボでは、“エア マックス 97(AIR MAX 97)”をベースに採用。バフ加工で起毛させた二層構造のディストレスレザーを使い、ワントーンながら奥行きのあるルックスに仕上げた。
ショー後、川久保玲デザイナーは「何にも属さず、自由に生きるノマドが羨ましい」と語った。たしかに、物理的な制約はまだまだ多い。それでも、コロナを機にパリコレを離脱し、国内でリアルショーを行う川久保デザイナーには、既存のファッションシステムに固執しない軽やかな精神性を感じる。クリエイションの最前線に立ちながら、ノマドのようなマインドを持ち合わせることこそ、同ブランドの強みではないだろうか。