2020年2月にリブランディングした「カネボウ」は、消費者の共感を得て長く愛されるためにはブランドパーパスが重要であると感じ、「まず市場におけるブランドの存在意義はなにか、“なぜ”その商品・サービスをお客さまに届けるのか、などを熟考した」(山口聡一花王「カネボウ」ブランドグループ長)という。そこで、鐘紡が創業した1887年まで歴史をさかのぼり、会社の哲学・思想・世の中での存在意義等を検証。鐘紡は約10年に一度のスパンでその時代を象徴する宣言を打ち出していたが、中でも印象的だったのは、「1979年にイギリスのサッチャー首相を口紅“レディ80”の新聞広告に起用していたことだ。このように女性の社会進出を応援するなど、希望を語り強く生きる人を応援してきた。そこで、「社名を背負うブランドとして“希望”を発信するという原点に回帰し、『I HOPE.』をブランドステートメントに掲げた」。
“希望”というメッセージをかつての社員も含めた全ステークホルダーに発信したいと思い、ブランドムービーを制作。SNSでの訴求はもちろん、あえてテレビ放映することを選択した。20年1月には「唇よ、熱く希望を語れ」をテーマに、ありのままの自分を肯定するモデルなど、希望をシンボリックに伝える4人の主要キャストを起用した。
一方で“希望”につながる製品を提供できたことも大きい。「ブランドを成長させるには共感を得られるパーパスと、パーパスを具現化する製品の両輪が必要」。リブランディングのスタート時は口紅をブランドパーパス早期伝達の主要アイテムに位置づけ、さらにパーパスを自分ごと化してもらうために「自分の肌や個性を知り、自分を磨くことが“希望”につながるとして、洗顔料とクリームを強く打ち出したところ、確かな肌効果で自分をアップデートできたという声もあがり、大ヒットした」。リブランディング後は、「“希望”を化粧品メーカーがいうなんて、にわかには信じられないくらい。」「意志を持つブランドは強い。」といった顧客の声に支えられ、売上高は市場を30%上回る伸長を見せている。
1年後には美容部員や顧客参加型情報発信のプラットフォームを構築し、“希望”でつながるファンプログラムなどを提供する。3年後はエリア旗艦店やECを結びつけるOMO(オンラインとオフラインの融合)を深耕し、ブランドならではの新プレステージ戦略を訴求、5年後にはアジアで唯一のジェンダーインクルーシブブランドとして、「HOPEを軸にした新ビジネスを創出したい」と“希望”で溢れた世界の実現に貢献する。
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受付開始 お客さまに愛され、チームを強くする
パーパスのあるブランドづくりを実践する全7回講座
受講日時:2022年4月1日(金)、4月8日(金)、4月22日(金)、5月13日(金)、5月27日(金)、6月10日(金)、6月24日(金)
今なぜパーパスが必要なのか
「WWDJAPAN」は今春、今その必要性が叫ばれる「パーパス」の策定から、組織内での共有、製品やサービスへの具現化、消費者への発信までを考えるセミナー&ワークショップを開催し、未来のブランド・ディレクターを育成・応援します。サステナブルやDXについての取材を重ねる中で、「どうやってサステナ?」や「何を使ってDX?」には真剣に向き合っているのに、「なんでサステナ?」や「どうしてDX?」の視点は置き去りなケースを見てきました。そこから「この会社はなんのために?」や「なぜ、このブランドを?」という思考が必要な時だと感じました。
セミナーを通して、経済性と社会性、何より内から湧き出るモチベーションなどの文化性を網羅した「パーパス」を見いだし、それを共有することで強い組織に、製品やコミュニケーションの形で発信することで顧客に愛されるブランドに進化することを願っています。(WWDJAPAN編集長 村上要)
受講で得られるスキル
先駆者たちが実践する新しい時代のブランド作りからヒントを獲得し、ワークショップではロードマップに沿って、受講者それぞれの確固たるブランドの価値をWWDJAPANと共に見つけます。