ロンドンを拠点にするファッション系スタートアップのヒート(HEAT)はこのほど、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)の投資ファンドであるLVMHラグジュアリー・ベンチャーズ(LVMH LUXURY VENTURES)とベンチャーキャピタルのアントラー(ANTLER)などから、シードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)の資金調達を行った。そのほかステファノ・ロッソ(Stefano Rosso)OTB取締役やエルメス(HERMES)の創業者一族らもエンジェル投資家として出資している。
「ヒート」は2019年にジョー・ウィルキンソン(Joe Wilkinson)とマリオ・マーハー(Mario Maher)が創業。ラグジュアリーストリートウエアブランドの余剰在庫を集め、“ミステリーボックス”として商品の詰め合わせを販売する。“ミステリーボックス”は中身が分からないようになっており、通常の“ヒートボックス”とプレミアム版の“ヒートボックス+”2種をそろえる。299ポンド(約4万6600円)の通常ボックスは500ポンド(約7万8000円)以上を、500ポンドのプレミアムボックスは850ポンド(約13万2600円)以上に相当する商品を詰め合わせている。ストリートウエアならではのドロップ形式(不定期販売)を採用し、若年層に人気だ。これまでZ世代を中心とする60万人以上の消費者に、2万箱以上を販売してきた。
現在「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」「アミリ(AMIRI)」「ビリオネア ボーイズ クラブ(BILLIONAIRE BOYS CLUB)」といったストリートウエアブランドに加え、最近は「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ロエベ(LOEWE)」「ジャックムス(JACQUEMUS)」「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」といったラグジュアリーメゾンとも協業し、計60ブランド以上の商品を売っている。また元々は過去のシーズンの商品を売るシステムだったが、「ハイダーアッカーマン(HAIDER ACKERMANN)」などとは新作のローンチをボックスで行うなど、サービスの幅を広げている。
今回獲得した資金でゲームやAIを用いたパーソナライゼーションなど、ECでの購買体験を充実させるサービス開発に充てる。ウィルキンソン=ヒート最高経営責任者は「デジタルネイティブな若年層のためのショッピングプラットフォームを構築し、イノベーションを生み出し続ける」とコメント。また現在イギリスのシェフィールドにディストリビューションセンターを構えるが、今後は欧米のネットワークを拡大させる狙いだ。
アントラーのマルテル・ハーデンバーグ(Martell Hardenberg)=パートナーは「ヒート」を「消費者の意識がめまぐるしく変化する中、ブランドの世界観を崩すことなく全く新しい売買プラットフォームを提供した」と評価する。